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連勝街道一直線。阿部詩は「見たくない映像」を分析して連覇達成 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

 しかし決勝では、準決勝までとは詩の柔道のスタイルが一変した。対戦相手は過去3戦全敗していて、巴投げを得意とするアジア大会優勝の角田夏実(了徳寺学園職員)。組手がけんか四つで互いになかなか組めない展開になった。

 そんな中でも詩は「しっかり襟を持って柔道をしようと思っていたけれど、相手もすごくうまいので襟を持てなかったです。でも、そこで止まってしまったら巴投げで投げられるので、絶対に止まらないようにしようと思ってがむしゃらに仕掛けました」と、激しく動き続ける柔道を展開した。そのままゴールデンスコアに入ると、開始57秒で両者指導を受け、これで角田の指導が3になり、詩が反則勝ちを決めた。

「投げるのは厳しいかなと思っていたので、ゴールデンスコアに入ってからは両者指導ということも頭の中にありました。でも、相手が前に出てきてくれるのもあったので、ワンチャンスがあれば思い切り入っていこうと思っていました。

 がむしゃらに、何も考えずに前に出る柔道が自分の取り柄だと思いますが、角田さんとの試合はそれで負けているので......。だから、今回はしっかり相手がやってくるところを見て、『攻めるところはしっかり攻めて、守るところは守る』と考えてやりました」

 こう話す詩を、増地克之女子監督は次のように評価する。

「世界選手権の内容も含めて、力をつけていると感じました。とくに今回は大人の柔道というか、世界選手権で優勝しているから負けられないということで、決勝はああいう柔道になったと思います。これからは競った場面で、そういう戦い方も必要になってくる。いろんな戦いをしていけたらいいとプラスに考えています」

 詩はその監督の言葉を受けて、「周りが見たら、たぶん考えた柔道だなという風に思うだろうけど、そのとおり、勝つための柔道を徹底しました」と笑顔で話す。

「角田さんにはもう3回負けているので、4回も負けたらもう話にならないなと思った。これまでは勝った試合の映像しか見なくて、負けた試合を見るのは嫌でしたが、絶対に勝つためにはそういうこともしなければいけないと思い、4月の全日本選抜体重別で負けた映像を10月くらいからずっと見てきました。『こうやったらいけない』とか考えて、次の日にそれを練習していたので、試合でもしっかり落ち着いてできたかなと思います」

 兄の一二三は、昨年のグランドスラム優勝で世界選手権代表を内定させた後、ヨーロッパへ単身修行に出ていたが、詩は「私はひとりで海外というのはないですけどね」と笑う。それでも強くなるための努力は惜しまない。

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