小川直也Jrの優勝でさらに激戦。男子柔道重量級は壮絶サバイバルに (3ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

 さらに100キロ級では、高校生ながら今年2月のパリ・グランドスラムを制し、あらゆる柔道関係者が「天才」「怪物」と、その才能を評価する飯田健太郎(現在、国士舘大1年)が国内のシニア大会で初戴冠。体幹が強く簡単には相手に崩されない受けの強さを備え、右組みから井上康生(現・男子チーム監督)を彷彿とさせる内股に加え、10分近い試合となった準決勝で勝負を決めた「俵投げ」も大きな武器だ。

「自分の課題にしてきたスタミナについては、去年と比べて長い時間を戦うことができた。あらゆる稽古で、自分をとことん追い込んだあとの、さらにもう一本を意識的に取り組んできた。その成果は出せました」

 1年前は体重90キロ台で、減量することなく100キロ級の試合に出場していた。当時、「いずれは普段104キロぐらいの体重で、試合前に100キロまで減量するような体格で戦っていきたい」と話していたが、食事とトレーニングによって、理想的な体を手に入れた。試合では、昨年までは掛けなかった背負い投げを仕掛ける場面もあった。背の高い外国人選手対策だという。

 飯田がターゲットにする柔道家はひとりしかいない。現在、飯田が4連敗中のウルフ・アロンだ。現・世界王者に勝たなければ飯田の世界選手権の道も、東京五輪の道もない。

「パワーとスタミナで差がある。4連敗しているので、(12月の)グランドスラム東京ではウルフさんと対戦するところまで勝ち上がって、絶対に勝ちたい」

 グランドスラム東京や来春の選抜体重別選手権の結果によっては、来年、アゼルバイジャンのバクーで開催される世界選手権代表の顔ぶれがガラリと変わっている可能性すらある。

 混沌とする男子の重量級戦線から抜け出す柔道家は現れるのか――。

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