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長与千種が新団体マーベラスを旗揚げ。愛弟子・彩羽匠に託す思い (4ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文・写真 text&photo by Ozaki Mugiko

「でも、もし叶うことなら、彩羽とリングの上で組んでみたいと思いました。組んだときの呼吸を感じてみたかった。それが、2014年『That’s 女子プロレス』大田区総合体育館で実現したんです。リングで並んだとき、彩羽はカッコよかった。控室でウロウロしているときもカッコよかった。他にも動ける凄い選手はいるけど、凄いだけではダメなんです。人の心を動かせるかどうか。そのキャラが際立っているかどうかなんです。彩羽にはそれがありました」

 その一方で、彼女と組んで実感した。もう自分を訪ねてきた頃の彼女ではない。「ああ、この子は違う団体のレスラーなんだ……」。試合の最後、長与はマーベラスの旗揚げを発表した。彩羽はそこで初めて知ることになる。憧れの人が、新しい団体を作る。自分はそこには入れない。動揺を隠すのに必死だった。自分に対して苛立った。なぜ自分はもう少し待たなかったんだろう。長与に初めて会ったときに言われた「大学を卒業しなさい」という言葉通りにしていれば……。長与のその言葉は、「待っててほしい」の意味だった。
 
 その後、「That’s 女子プロレス」の地方巡業に、彩羽はついていく。長与の身の回りのことをこなす中、一番キャリアの浅い彩羽は、洗濯機を使うのが深夜3時近くになったことがあった。長与のコスチュームが朝までに乾かない。そう思った彩羽は、朝までコスチュームを持ってホテルの中を走り回り、乾かした。それを聞いた長与は思わず笑ってしまった。やっぱりこの子がほしい。すれ違いを乗り越え、彩羽はマーベラスに入団した。

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