【ボクシング】平成のKOキングが拳で掴んだ「一番のご馳走」 (4ページ目)
現役生活15年のうち12年を寄り沿い、2001年に結婚した妻も、最初は現役続行に反対だった。これ以上は危険だと......。それでも最後は腹をくくり、坂本がもし倒れたり、その後の人生に支障をきたすようなことになったとしても面倒を見られるようにと、妻はヘルパーの資格を取った。
現役最後の試合になったのは2007年1月の一戦。倒すか、倒されるか、常に前進を続けたボクサーにとって、その試合はキャリア47戦目にして、初のドローだった。
試合後、リングから降りる階段を踏みしめると、「坂本、愛してるぞ!」「お前が好きだ!」と、ボクシング会場には場違いとも思える歓声が聞こえた。その瞬間、坂本のなかで、"影と光"は逆転する。
「ああ、単に試合の勝ち負けじゃないんだ。俺は人生の応援をしてもらっていたんだなと。それに気づき、笑って階段を下りられたんです。世界チャンピオンの称号は手にできなかった。キャリア終盤、身体はボロボロだった。最後の試合もドロー。それでも、ボクシングという競技の勝者としてリングを降りられたと感じたんです」
現在、坂本は2010年に東京都荒川区に開いた『SRSボクシングジム』の会長を務め、若手ボクサーの育成に励んでいる。そのかたわら、全国の学校、児童養護施設、少年院などで講演やセッションを行ない、「どんな境遇だろうとあきらめるな。未来は自分の力で変えられるんだ」と、子どもたちに伝え続けている。
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