【ボクシング】平成のKOキングが拳で掴んだ「一番のご馳走」 (3ページ目)
坂本は畑山戦から引退までの7年間で、妻が宿した子を2度亡くすという悲劇に見舞われた。また、椎間板ヘルニアのレーザー手術を3回、外科手術を1回受け、今もチタン製のボルトが坂本の腰には埋まっている。
「ボロボロになる姿をもう見たくないと、ファンは思ったかもしれない。ただ、あの7年は僕にとって、影を光に裏返すために必要な時間だった。亡くなった子どもたち、家族に、自分がもう一度、もっと強いところを見せなきゃいけない。そこが、本当の最終地点だなって思ってた」
ただ、もはや坂本の身体は壊れる寸前だった。繰り返した手術で痛みは軽減こそすれ、以前のようには走り込めない。減量はさらに苦しみを増した。
「ヘルニアだから体重を落とせない。それは言い訳。だったら辞めればいい。引退すればいい。落ちないじゃなく、どうしたら落ちるかを考える。食べない、飲まないは当たり前。だから僕は、お風呂の時間を増やしたんです。ベビーローションを肌に塗って、皮膚呼吸を止める。すると、汗がもっと出る。普通はお風呂ってリラックスだったり、1日の疲れを癒すために入るものだと思う。でも、僕にとっては体重を落とすために入るもの、苦痛以外のなにものでもなかった」
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