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【SVリーグ】ムセルスキーの長い独白「バレーボールが導いてくれたこの旅路は、言葉で言い尽くせないほどすばらしいものだった」 (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Yoichi Igawa

【「このスポーツを惰性で続けるようなことはしたくない」】

「現役引退の理由をきちんと話そうとすれば、おそらくもう一度、別のインタビューの機会を設けてもらったほうがいいかもしれない。簡潔に伝えることはできそうにないんだ。長い話になるけれど、聞いてもらえるかな?」

──もちろん。そのためにあなたに会いに来たのです。

「この決断にいたるまで、本当に長い時間を費やした。自分自身にさまざまなことを率直に問いかけた帰結なんだ。まず加齢とともに、以前よりリカバリーに時間と努力を要するようになった。シンプルに言えば、トップレベルでプレーするのが難しくなってきたと感じるようになったんだ。

 それはフィジカルだけではない。気力の面でも、かつてのような状態ではなくなってしまっている。モチベーションを高く保てなければ、物事に真摯に向き合うことはできなくなってしまうよね。それは自分の生き方にも反するものだ。このすばらしいスポーツを、惰性で続けるようなことはしたくない。

 つまり、これまでのチャプターを終わりにすべきだと感じたんだ。次の人生に進むべき時が来たのだと。

 それから家族のこと。私にとって、家族はすべての礎だ。彼らの協力なくして、今の自分はありえない。妻はいつも、私の意向を尊重してくれた。母国から遠い日本に一緒に来てくれ、どんな時も私を支えてくれた。それよりももっと前から、彼女の存在がなければ、私はフィジカルもメンタルも、うまく維持できなかったはずだ。

 日本での生活は快適だったけれど、時には困難もあった。つまるところ、我々はエイリアン(異邦人)だから。しかし妻も息子も、そうした厳しい時にも不平をこぼすことなく、じっと耐えてくれたんだ。逆に私が苦しんでいる時は、すぐそばで静かに寄り添ってくれた。ふたりの信頼と愛がなければ、このようなすばらしい旅を続けることはできなかった。

 長く一緒にいる妻には、感謝してもしきれない。彼女の存在がなければ、多くのバレーボールファンの記憶に残っているはずのあの(ロンドン・)オリンピック決勝の勝利も、日本での充実した日々も、絶対になかったはずだ。

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