ネーションズリーグ、ファイナルラウンドはパリ五輪への試金石 古賀紗理那らの激動の日々 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 取材エリアで、セッターの岩崎こよみは最後まで取材対応をしていた。

 35歳で育児をしながらのプレーで、日本スポーツ特有の報道形式からは「ママ」という属性で語られる。それは彼女のアイデンティティのひとつだろう。だが、2009年に代表に初めて選ばれ、アキレス腱断裂から復活し、イタリアで武者修行し、Vリーグを代表する選手のひとりとなり、長くセッターとして生きてきた。若い選手たちを鼓舞する姿は、誰よりも「プレーヤー」の属性と言えるだろう。

 6月17日、日本は東京五輪で金メダルに輝いたアメリカに挑んでいる。

「5位浮上の可能性があり、パリ五輪の組み合わせで第2ポッドに入れるだけに、勝利を目指す」

 チームは明確な目標を掲げてこの試合に挑んでいた。五輪出場は確定。次は五輪をどう戦うか、に切り替わっていたわけだ。だが......。結果から言えば、ストレート負けで力の差を見せつけられている。

 サーブで崩したかったが、むしろ相手のパワフルなサーブに綻びが出た。ブロッカーとリベロが連係した守りに阻まれ、スパイクも決まらなかった。そして、じりじりと突き放された。

「今日はずっとチグハグでした」

 キャプテンである古賀は、そうはっきりとメッセージを出すことで、チームメイトたちを啓発するようでもあった。勝つために妥協はしない。その姿勢が、エースの存在理由だろう。1セット目、古賀は精度の高いサーブで相手を崩し、立て続けにブレイク。一時は逆転に成功した戦いはひと筋の光明だった。彼女のような人材がいることが、日本の生命線だ。

「選手たちが、昨年五輪予選でトルコ、ブラジルに敗れた悔しさを半年間、継続してくれました」

 眞鍋監督は会見で言った。やはり、このチームは否応なく五輪を分岐点にして存在している。その重力とどう向き合い、味方にできるか。

 6月20日、日本はネーションズリーグ、ファイナルラウンドの準々決勝で中国と戦う。これも7月のパリ五輪への試金石になるはずだ。

【スポルティーバ バレーボール男子日本代表特集号】

7月17日発売 ご予約はこちら>>

パリオリンピックでのメダル獲得の期待がふくらむバレーボール男子日本代表。
石川祐希、高橋藍らを筆頭に、絶大な人気を誇る日本代表チームを特集。
代表選手全員の撮りおろしとインタビューのほか、ネーションズリーグの最新プレー写真も掲載。

特典付録は『ハイキュー!!』特製カレンダーと古舘春一先生による描きおろしオリジナルイラストのクリアファイル。
カレンダーのイラストは大ヒット中の『ハイキュー!!ショーセツバン!!』(JUMP j BOOKS)の全面オビのデザインを使用。

※内容は変更になる可能性もございます。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

フォトギャラリーを見る

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る