石川真佑は「燃えていた」 課題を突きつけられたネーションズリーグで得たものとは

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 ネーションズリーグ女子バレーボール予選ラウンド福岡大会で、石川真佑は清冽な躍動感を放っていた。集中して射抜くような目が、弾けるような優しい笑顔になる刹那、彼女を中心に世界が華やぐ。

 スパイクで相手を仕留める。それは黒か白かのやり取りと言えるか。そのヒリヒリした感覚が、彼女のようなアウトサイドヒッターを魅力的に映す。ハムストリングの爆発力で宙に浮かび、背筋を反らし、腕を振り上げ、まるで全身を弓と化し、急所を貫くように矢を打ち込む。空中で止まった時、打つべき筋が見えるのか。若さに似合わぬ老獪さで、駆け引きを楽しんでいるようだ。

 1本のスパイクに生き方は投影される。決めるべき一撃を外す――それは矜持が許さないのだろう。

 途中交代を命じられたカナダ戦後と、快勝の立役者になったセルビア戦のはざまに、彼女の真実があった。

「悔しさもあったなかでの試合で、自分もしっかりと(点を)取りきろう、と思っていました。今日は全体的によかったと思います。打ちきるだけじゃなくて、ブロックを利用して打てていたので」

 セルビア戦後、そう石川は言った。敵を仕留めた恍惚が浮かんでいた。

 敗れたアメリカ戦で日本最多の13得点を決めた石川真佑photo by MATSUO.K/AFLO SPORT敗れたアメリカ戦で日本最多の13得点を決めた石川真佑photo by MATSUO.K/AFLO SPORTこの記事に関連する写真を見る今大会、石川は日本代表で、エースの古賀紗理那に次ぐ得点を記録している。期待に十分、応えたと言える。もっとも、試合によっては忸怩たる思いがあったはずだ。

 パリ五輪出場がかかったカナダ戦、石川は1セット目、順調に得点を重ねた。しかし、2セット目の途中からスパイクが決まらず、3セット目以降は出場機会が与えられなかった。チームはフルセットの末に逆転負けを喫し、試合後の得点計算でからくも五輪出場が確定したが、石川は雪辱を晴らす機会を待ち望んでいたはずだ。

――ケガでもなかった石川選手を、なぜ途中から外したのですか?

 カナダ戦後の監督会見では、そんな質問が出た。

「スパイク決定率が一番低かったから代えました。以上」

 眞鍋政義監督のコメントは、スパイクを決めることが宿命であるアウトサイドヒッター、石川の自負心を刺激し、奮い立たせる計算もあったのか。

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プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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