ネーションズリーグ、ファイナルラウンドはパリ五輪への試金石 古賀紗理那らの激動の日々 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【印象的だった岩崎こよみの姿】

 ともあれ、それは朗報だった。

 日本は昨年9月のパリ五輪予選でフルセットの末にブラジルに敗れて出場権を逃した後、乾坤一擲で挑んだネーションズリーグを通じ、着実にポイントを稼いできた。昨年のワールドカップで優勝したトルコや、アジアでランキング1位の中国からも勝ち星を挙げている。その戦いが正当に評価された形だろう。6大会連続五輪出場は立派なものだ。

 この日、日本の試合はなかった。近隣の商業デパートの入り口には、古賀紗理那や宮部藍梨など人気選手の等身大パネルが飾られ、そこにファンが集まって笑顔で記念撮影をしていた。彼女たちは、密かに五輪出場決定を祝っているようだった。
 
 6月16日、日本は強豪セルビアをストレートで下している。相手は数人の主力を欠いていたが、快勝はカナダ戦でのモヤモヤを払しょくした。

 ミドルブロッカーの荒木彩花が、ブロック一枚でシャットアウト。石川真佑がストレート、クロスを打ち分け、得意のブロックアウトを誘う。山田二千華がブロードを決め、フェイントも成功。終盤は古賀がサーブでリベロを崩し、レフトから強烈なスパイクを打ち込んでいる。

<サーブでできるだけ崩し、ブロック、レシーブを有利に>

 それは、日本が世界の強豪を打倒するベースになるだろう。選手たちは、それぞれの持ち味を出しながら戦っていた。

「誰ひとり欠けても、この切符をつかめなかった」

 選手たちは皆、同じ意味のことを口にした。ひとつひとつの個性の集まりなのだろう。

「子育てのことを考えないといけないところもあるので、バレーに100%をかけているみんなと比べて、自分がやっていいのか、という葛藤はありました。でも、自分にしかわからない、みんなに伝えられることもあるかなって。今はオリンピック出場が決まって、本当によかったです。自分はアタッカーを信じて、最後に打ちやすいボールを託すだけですが、出た課題に取り組めるように......」

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