女子バレーボール石井優希が明かす。東京五輪後の「引退を考えた」時期から今見えている新たな目標

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari
  • 『泣き虫の笑顔』石井優希:著/ワニブックス刊●写真

衝撃的な終わり方をしたファイナル

――翌日に行なわれたファイナル1戦目については? 

「もちろんやる気はあって、その上でみんなワクワクしていました。勢いに乗っていましたし、恐いものは何もなかった。前日の東レ戦の勢いのまま、気持ちもプレーも入れました」

――普通に考えると、連戦はハンデですよね。たとえば男子では、ファイナル3を勝ったサントリーが、翌日にコンディションを崩して完敗だったんですが、久光は連戦でJTは前日試合なしというハンデをものともしなかった。

「逆に前日に試合をしていたのがよかったかもしれないです。その勢いのまま次の日も戦うことができました。私たちはレギュラーラウンド終盤、10日間で6試合していたので、そこを経験していたのもよかったのかもしれません。その勢いで勝ってきたから、ファイナルの1戦目も疲労よりは気持ちが前面に出ていましたね」

――なるほど。そして翌週、両チームからコロナ感染者が出てファイナル2戦目は中止、1戦目の勝利をもって久光が優勝という驚きの終わり方をしました。

「最初に久光にコロナ感染者が数名出た時は、出られるメンバーで決勝戦をやる予定だったので、その人たちの分も、という気持ちで準備をしていました。正直、うれしいというより、ちゃんと2戦目もやりたかった気持ちのほうが半分以上かもしれないですね。

 優勝という形にはなりましたが、全然優勝した実感がなくて。今まで優勝を何度も経験させてもらって、ファンの方々と歓喜したり、優勝を実感できる瞬間というのを知っている分、すごくあっけなく終わってしまった。『おめでとう』と言っていただけてもあんまり実感がないんですよね。先日、(久光本拠地の)佐賀県で優勝報告会をさせていただいたんですけど、そこでもやっぱり......。こういう状況を今まで経験したことがないので、『そういうものかな』と思っています」

――でも、3年ぶりの優勝に加えて昨年とその前の年は、いい成績ではなかったことを考えると、得られたものもあるのでは?

「今回の優勝と今まで勝っていた時の優勝で違うのは、今までは『絶対勝たないといけない』という思いがあったんです。実力のあるメンバーもそろっていたし、勝つことが当たり前だったので、もちろんうれしいんですけど、ホッとした気持ちのほうが大きかった。でも、今回は、2シーズン結果を残せなくて苦しくて、夏合宿では『共有』という言葉をテーマにして、よりチームの一体感を感じられたシーズンだったなと感じています。今までの優勝よりも、違ううれしさの優勝でした。(久光で)12年間過ごしたなかで、選手とスタッフが本当にひとつになった優勝だったと一番感じました」

――石井選手個人としては? 

「私自身は東京オリンピックが終わって、すごくしんどかったです。バレーを引退してもいいのかなと思うぐらい悩んでいた時期がありました。でも、それがあったからこそ、チームに合流した時に肩の力が抜けました。

代表がいったん終わったので、チームに合流して最初に監督と話して、自分がどんどん前に出てやりたいというよりは、世代交代というところも含めて、何かチームに貢献できればいいなというような考えにシフトチェンジしたんです。結果的に後半はずっと出場したのですが、その考え方の変化が私にとってすごくハマったのかなと思います。楽しいシーズンでした」

――2020-21シーズンは悩みながらやっていたようでしたが、2021-22シーズンはうまくはまったんですね。

「これまでは代表があったので、『自分が引っ張っていかないと』とか。常に代表のことを考えて動いていた分、変に気を張っていました。でも、(代表が)終わってからは、『私ってそういうキャラじゃないよな』って(笑)。どっちかというと、のほほんとしているタイプなので。気をラクにしてやったら、逆によかった。それは私にとってもチームにとってもプラスだったなと感じています」

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