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Vリーグの監督が悩む「アジア枠」活用と
日本人育成のバランス (2ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari

 劉力賓は、日本でプレーすることが「楽しい」と語る。

「日本のバレーボールは中国と違って、会場にファンがたくさんいます。どこの会場に行ってもたくさんの声援があるなかでプレーできることはとても楽しい。中国ではインターネットを通して僕のプレーを見てくれるファンも多いですよ。1試合あたり1、2万人くらいですかね。

 中国でプレーしていた時はたくさん出場機会をもらえましたが、フランスでは4、5試合しか出られなかった。日本では試合に出場できることだけじゃなく、生活も充実しています。セッターの深津(旭弘)選手とはとてもいい友人で、試合以外でも自分のよさを引き出すためにコミュニケーションを取ってくれるので、気持ちよくプレーができています」

 一方の東レは、アウン トゥがレギュラーとしてチームを支えてきた。リーグ序盤に多くのケガ人が出た苦しい状況の中で、アジア枠の恩恵を受けた小林敦監督は、その有効性を実感している。

「うちはアジア枠をかなり有効活用できています。世界には能力が高い選手がたくさいますから、活用できるものは活用します。今後、うちやJTさんなどの勝利数が増えてアジア枠の有効性が証明されてくれば、他のチームも真剣に検討するでしょう。ロシア代表の(ドミトリー・)ムセルスキー選手がいるサントリーさんなどが、アジア枠でいい選手を活用したら歯が立たないイメージがあります。とりあえず現状は、うちにとっては非常にありがたい制度です」

 Vリーグが発足した1994年当初から2000年代中盤までは、外国人枠が2枠あった。その時代に東レの現役選手として活躍していた小林監督は、現在の制度との違いをこう語る。

「その頃は、うちのチームは同じ国の外国人をふたり入れていたこともあって、コミュニケーションもしっかりとれていたし、チームとして成り立たせるのは難しくありませんでした。それに比べると、アジア枠の選手と欧米の選手が一緒のコートで実力を発揮するのは簡単ではない。JTさんがシーズン序盤でつまずいていたのも、そういう要因があるのかなと。育ってきた環境もバレーボールの文化も違いますからね。

 もし今、以前と同じアジア関係なく外国人選手をふたり入れていいとなったら、資金力が豊富なチームには勝てなくなる。今の制度のままいくのか、変えるのかは運営に任せます。興行面や、アジアの興味を日本のリーグに向けさせることを考えれば今のまま続けたほうがいいだろうし、日本人選手の強化の妨げになると判断したならばやめたほうがいい。でも、もし3枠に増えたら、おそらくうちは3人とりますね」

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