Vリーグの監督が悩む「アジア枠」活用と日本人育成のバランス (3ページ目)
アジア枠は、資金力で劣るチームにとっての"助け船"になっている。今季からV1リーグに昇格し、フィリピンのマーク・エスペホ選手が攻撃的レフトを担う大分三好ヴァイセアドラーの小川貴史監督は、「うちは資金がそんなに豊かではないため、なかなか能力の高い日本人選手、欧米の選手を獲得することができない。そういったなかでこの制度はありがたいです。九州だとアジアも近いですから呼びやすいですしね」と笑顔で語った。
その「近さ」を最大限に活用しているのが、昨季3冠を果たしたパナソニックパンサーズだ。今季から、台湾代表エースの陳建禎(チン・ケンテイ)がチームに加入。台湾では黒狗(オウガオ)というニックネームで呼ばれる人気絶大の選手で、ブラカードを持って本拠地・枚方でのゲームまで足を運ぶ台湾のファンもいた。
また、パナソニックは今季から沖縄市を第2の本拠地となる「サブホームタウン」としており、1月19日に行なわれたサブホームゲームには50人を超えるファンが台湾から詰めかけた。陳建禎が入場すると黄色い声援が飛び、試合後のホームゲームイベント終了後には陳建禎がマイクを取って「みんな、降りてきて! 一緒に写真を撮ろう!」と呼びかけて記念撮影をするなど、ファンサービスに努めた。
会場の台湾人ファンと記念撮影する陳建禎(中央)photo by Otsuka Atsushi パナソニックの川村慎二監督は、「台湾代表エースである陳を獲得する際、台湾からの集客を見越していた部分もあります。台湾はバレーが盛んですしね。パナソニックの台湾支社にサブホームゲームのチラシを配ってもらったりもしています。(4月に台湾で行なわれる)アジアクラブ選手権も楽しみですね」と期待を述べた。
前年度のリーグ覇者が出場できるアジアクラブ選手権で優勝を狙うパナソニックにとって、現地ファンの応援は大きな力になるだろう。陳建禎は台湾のファンに対する応援のお願いも忘れなかった。
アジア枠のポジティブな面が目立つ反面、日本人監督に共通していたネガティブ面は「日本人選手の出場機会が減る」というものだった。
東レの小林監督が「間違いなく日本人選手の活躍の場は減るでしょうね」と話せば、パナソニックの川村監督も同様の懸念を口にしていた。
「多くのチームは外国人枠の選手をオポジットに、アジア枠の選手を攻撃型レフトに入れます。そうなると攻撃ができる日本人選手がいなくなる。ルールで決まった以上、うちもさまざまな狙いがあって陳を獲得しましたが、東京五輪が翌年に迫る今じゃなくても、とは思いますね」
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