Vリーグの監督が悩む「アジア枠」活用と
日本人育成のバランス

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari

 バレーボールの国内トップリーグは、2018-19シーズンから「V.LEAGUE」と名称を変え、ビジネス化に向けてスタートを切った。ホームゲームの数を増やしたり、運営を地方協会からチームに移譲したりと、いくつかの変更点があったが、そのうちのひとつが「アジア枠」の導入だ。

 2017-18シーズンまでは、1チームにつき、ひとりの外国人を登録・出場させることができたが、今季からはアジア枠1枠がプラスされた。男子は約半数のチームがアジア枠を活用しているのに対し、女子はごくわずか。それは、女子が中国・韓国・台湾の選手を除外していることが影響しているだろう。詳細は明かされていないが、それは女子チームの総意で決まったことだという。今後、ルールが変更される可能性もあるため、その動きに注目したい。

 アジア枠を設けた狙いについて、日本バレーボール協会会長でVリーグ機構会長も務める嶋岡健治氏はこう説明する。

「世界を目指すのはもちろんですが、アジアの選手たちも非常に力をつけてきています。そういう選手を加入させることでアジア全体のレベルを上げることはもちろん、その選手の出身国の方たちにVリーグを観てもらえるチャンスを増やしてもらうことも考慮しました。日本から近いアジアの国々であれば、その可能性が高いと思ったんです」

 昨年末に行なわれた天皇杯・皇后杯の男子では、アジア枠を活用して得点力を上げた2チームの決勝になった。決勝を制したJTサンダーズは中国代表の劉力賓(リュー・リービン)、準優勝した東レアローズはミャンマー代表のアウン トゥが、それぞれチーム2位の得点(1位は外国人枠の選手)を記録した。

今季JTに加入した劉力賓 photo by Horie Joe今季JTに加入した劉力賓 photo by Horie Joe JTのヴェセリン・ヴコヴィッチ監督にアジア枠のメリット・デメリットについて聞くと、「デメリットは感じません。枠ができたから何も考えずに獲得したというわけではなく、このシステムが導入されると決まった時に、すぐにどんな選手がいるかを調査しました。そのなかで、劉力賓の情報も入ってきた。中国代表の(ラウル・)ロサノ監督や、昨年プレーしたフランスリーグのチームの監督ともコミュニケーションを取り、チームに必要な選手だと確信して交渉を始めたんです」と話した。

 その劉力賓はレフト対角の1枚で、攻撃的レフトを担っている。サーブレシーブをしながら、スパイク、ブロックで得点を重ね、同チームのオーストラリア代表、エドガー・トーマスに次ぐ得点源となっている。とくにセンターからのバックアタックは、これまでJTにはあまりなかった攻撃で、今季リーグ2位(1月31日時点)と好調なJTの大きな武器になっている。

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