「8時半の女」石井優希は、女子バレー日本を救う「ラッキーガール」 (2ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 坂本清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

 代表を離れたことでまた落ち込んでしまってもおかしくなかったが、石井は2017-18シーズンのV・プレミアリーグで奮闘した。得点源である石井は、サーブで狙われることが多かったものの、しっかり受けきって勝利に貢献。チームを優勝に導き、攻守にわたる活躍が評価されてリーグMVPに輝いた石井は、今年4月に全日本に復帰した。

 ネーションズリーグ、アジア競技大会を終えて世界選手権を迎えてもなお、全日本での石井の立ち位置は微妙なままだった。中田監督は、守備面で絶対の信頼を置く新鍋理沙、攻守にオールマイティーな古賀紗理那、そしてエースとして期待がかかる黒後愛を中心に1次ラウンドの戦いをスタートさせた。

 1次ラウンドの5試合で石井がスタメンを張ったのは、"格下"との対戦になった第3試合のメキシコ戦、第4試合のカメルーン戦のみ。20歳の黒後、22歳の古賀が主力を担う状況に悔しさもあったというが、石井は決して下を向かなかった。

 チームの危機を救う場面がやってきたのが、2次ラウンド初戦のドミニカ戦。日本は2セットを先取しながら続けて2セットを落とし、フルセットに持ち込まれた。その第4セット終盤、劣勢の状況で黒後に代わって投入された石井が気を吐いて差を縮め、チームは勢いを取り戻した。

 コーチから「5セット目、スタートでいくよ」と伝えられて「チャンスをモノにしたい」と気持ちを奮い立たせた石井は、サーブで相手のレシーブを崩して連続得点を奪うなど、完全に日本のペースに持ち込む。サーブレシーブも安定し、2段トスもしっかりと打ち切ってドミニカを振り切った。

 3次ラウンド進出のための大事な試合になる強豪のセルビア、ブラジルとの試合でも石井は途中出場し、そのまま最後までコートで戦った。「途中出場でも自分の役割を果たせればいい」と気持ちを切り替えた石井は、「今ではもう、途中から入るほうが"ラッキーガール"になれると思っています」と頬を緩ませた。

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