黒後愛らアタッカー陣は好調も、
全日本女子に2つの課題が見つかった
10月19日にバレーボール世界選手権女子大会の5位、6位決定戦が行なわれ、アメリカに敗れた日本は6位で大会を終えた。直前のアジア競技大会で中国、タイ、韓国の後塵を拝して4位に終わったことを思えば、組み合わせに恵まれたとはいえ、世界の強豪が集う同大会でのベスト6入りは大きな成果だ。
その原動力となった黒後愛、古賀紗理那、石井優希らアタッカー陣が存在感を見せた一方で、少し気になるのがセッターとミドルブロッカーだ。
今大会の正セッターは、2016年のリオ五輪で宮下遥の控えだった田代佳奈美が務め、昨年グランドチャンピオンズカップで正セッターだった冨永こよみがセカンドセッターに回った。アジア競技大会で最後にトスを上げていたのは佐藤美弥だったが、今大会は怪我で欠場した。
世界選手権で正セッターを務めた田代 自身が現役時代にセッターだったこともあり、中田久美監督にとって特にこだわりがあるポジションだ。昨年のアジア選手権優勝直後には、「本当にセッターによって試合はガラッと変わってしまうんだなと、この大会で痛感しました」と語っていたが、国内(Vリーグ)で監督を努めていた久光製薬でも全日本でも、"絶対的な"セッターには恵まれてこなかった。2012年のロンドン五輪後には、銅メダルメンバーのアタッカー・狩野舞子にセッター転身を持ちかけて久光製薬に復帰させることも。しかし結局、狩野はアタッカーに戻っている。
自身と同じく10代で全日本に選出され、当初は「この子はものが違う」と期待をかけていた宮下も、昨年度は冨永と佐藤の2人の陰に隠れた。そして今年度は冨永、田代、佐藤を代表に選出し、世界選手権では田代を全試合でスタートから起用した。
大会初戦のアルゼンチン戦後、中田監督はその起用について「田代をスタートに決めたのは、トス回しというよりスパイクレシーブの面を評価したのと、攻撃のテンポもよかったから。今日の試合については、積極的にミドルとバックアタックを使えていたと思う」と説明した。確かに田代は、ミドルブロッカーやバックアタックを織り交ぜたトス回しができ、スパイクレシーブにも優れている。しかし余裕がない展開になると、真ん中からの攻撃が減って同じアタッカーに上げ続ける癖があり、レフトへのトスが低くネットに近くなる傾向もある。
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