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黒後愛らアタッカー陣は好調も、
全日本女子に2つの課題が見つかった (2ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 坂本清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

 レフトへのトスの低さは、チームの約束事として"あえて"やっている面もある。1次ラウンド最終戦のドイツ戦に勝利した後、田代は「ミドルもバックアタックも使えてよかったが、トスが浮いてしまっていたので、途中から速く低くするように修正した」と振り返っていた。

 ただ、低い上にネットに近くなると、ブロックをかわしたり、ブロックアウトを狙ったりすることが難しくなり、リバウンドがとれず"シャットアウト"を食らうことも多い。それについてはアタッカー陣からも「もう少しネットから離してほしい」「サーブレシーブがAパスで返らなかったときは少しトスを浮かせてほしい」といったリクエストがあったという。今後はさらに、状況によってトスを使い分けることが求められる。

「セッターを交代させて流れを変えるという方法と、アタッカーとのコンビを合わせていくために、ある程度は我慢して使い続けるという2つの選択肢があり、今回は後者を取って田代を起用しました。今の段階で『正セッターは誰?』と言われると困ってしまいますが、そろそろ決めないといけないでしょうね(苦笑)。ここが安定すれば、チームは完成すると思います」

 中田監督は、余裕がなくなったときに田代のトスの精度が悪くなることも認識しているようだったが、「トスが合う、合わないはセッターのせいだけではなく、アタッカーの技量の問題でもあり、そこはコミュニケーションを取って修正していってほしい」とつけ加え、コンビネーションの精度アップに期待を寄せた。

 一方のミドルブロッカーは、ロンドン五輪銅メダリストの荒木絵里香が気を吐いた。2次ラウンド第2戦のプエルトリコ戦では12得点を挙げ、チームのベストスコアラーにもなっている。クイックやブロードでの攻撃はもちろんだが、サーブで相手のレシーブを崩す場面も目立った。守備面でもブロックでしつこくタッチをとりにいくなど、34歳とベテランになった今でもプレーは全盛期と遜色ない。

 中田監督も「彼女は本当にすごい。ベテランになっても、荒木だけ練習量を少なくしているわけではないんですけど、自己管理ができている。荒木の働きは間違いなくチームに大きな影響を与えています」と感嘆した。

 だが、「他のミドルも頑張らないとね」と付け加えたように、荒木の対角が悩ましい。今大会ではほぼ奥村麻依が務めていたが、フル出場していたにもかかわらず、スパイク得点が「0」に終わる試合もあった。

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