錦織圭が「全盛期の10年前」と「35歳の今」との違いを痛感 目標はトップ50入り
初戦後の彼は、「今日は負けたとしても、納得いくプレーはできていた」と顔をほころばせ、2回戦の敗戦後には、「簡単なスコアでやられてしまった」と目を伏せた。
4年ぶりに出場したATPマスターズ1000「BNPパリバ・オープン」は、錦織圭にとって手応えと失意の両方を味わうトーナメントとなったようだ。
錦織圭は当面の目標として「トップ50」入りを掲げている photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 初戦で錦織が対戦したのは、世界58位のハウメ・ムナル(スペイン)。高い守備力を誇るクレー巧者を、6-2、5-7、7-6の大接戦の末に退けた。対して2回戦で当たった世界19位のウゴ・アンベール(フランス)は、サウスポーのアタッカー。今季、地元フランスでツアー7勝目も手にしている実力者に、4-6、3-6で敗れた。
もっとも、試合内容を子細に見れば、見どころと見せ場にも富む。いずれのセットも先にブレークを許したが、中盤でブレークバックし追い上げた。高く弾むストロークで相手の体勢を崩し、オープンコートを作っては叩きこむ鮮やかなウイナーで、観客の感嘆の声を誘いもした。
目に見える数字以上に、濃く見えた1時間28分。
ただ、そう水を向けると錦織は、「いや、だいぶ簡単でしたね」と、決まりの悪そうな笑みを浮かべた。
「相手にプレッシャーをかけられるところまでは、たぶんいかなかった。どうしても、サーブが入らなくなるタイミングでブレークされてしまうし、ミスが早いゲームが両セットとも1、2ゲームずつ出てしまった。そこをもうちょっとなくしたいなと思いますけど、やっぱりそこは、慣れていくしかないのかな、このスピードに......」
話しながら考え、考えながら言葉を紡ぐ彼は、「そこはもうちょっと、こう......、まだまだ足りないなっていうのは、今日の試合で感じましたね」と言った。
昨年5月に本格的にツアー復帰を果たした錦織は、8月の時点で581位だったランキングを、わずか半年で71位まで駆け上がった。
その間には、ATPツアーの下位カテゴリーに属するATPチャレンジャーにも多く出場。シーズン最終戦のヘルシンキ・チャレンジャーでは優勝した。さらには、今季開幕戦のATP250カテゴリーの香港オープンで準優勝。世界19位のカレン・ハチャノフ(ロシア)からフルセットの勝利ももぎ取っている。
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著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。