杉山愛が女子テニス日本代表監督として奮闘中「代表戦の盛り上がっていないスポーツの将来は危うい」 (2ページ目)
【日本女子テニス界の現状】
2022年11月に、収容人数1万人の有明コロシアムで開催されたウクライナ戦では、観客が初日に319人、2日目に1109人しか訪れなかった。この状況を見た杉山監督は、少しでも改善させるために自ら動き、SNSでの告知や知人への声かけなど、有明にテニスファンが来てもらえるように働きかけた。一般的に見れば、監督自らが動くというのは極めて異例のことだった。
「動かないと集まらないからです(苦笑)。(元プロ選手で大会名にもなっている)ビリー・ジーン・キングさんは、テニス界では有名ですが、やはり(一般的には)まだまだ知られていない。それに、私自身も昨年のような会場でやりたくなかった。観客が来ればプレッシャーが増えるかもしれないですが、そこが代表戦のよさでもある。代表戦の盛り上がっていないスポーツの将来は、危ういなと考えています。今年はバスケットや(野球の)WBCが、めちゃくちゃ盛り上がったなかで、(テニスが)置いてけぼりになることは、とても悲しいことです」
杉山監督は現役時代に、"有明の奇跡"と言われる1996年ドイツ戦で、第5試合のダブルスに抜擢され、シュテフィ・グラフを擁するドイツを相手に、満員の有明コロシアムで勝利したことが、競技人生で忘れられない思い出のひとつになっていると振り返る。
今回のコロンビア戦では、人が集まることでプレッシャーを感じると同時に、後押しも受けながら第5試合で勝利でき、ホームコートアドバンテージを活かすことができた。そして、杉山監督の努力の甲斐もあって、初日2025人、2日目3911人と、観客数アップにも成功した。
「もっと(日本テニス)協会にも動いてほしいし、アナログもデジタルもいろいろ使い、アイデアも出しながら盛り上げていきたい。今回初めて観戦に来た方も多くて、『テニスって面白いね』、『テニスファンになりました』、『テニス観戦クセになりそう』という声もいただいたので、そういう方たちにもまた届けたい」
杉山監督は、現役を引退してからも、テニスの解説をしたり、自分のテニスクラブで子供たちと接したり、2018年から「Ai Sugiyama Cup」というジュニア大会のトーナメントディレクターを務めて、テニスの現場に立ち続けていた。そして今年、日本代表の現場では、さらに生き生きとして見える。
「(監督)1年目は、もちろん私だけの力ではないんですけれども、自分が期待していた以上の結果と方向性、選手たちも少しずつ勢いが出てきたという手応えを感じています。日本女子テニスの明るい兆しは見えてきています。監督という肩書きがあるからこそ、選手みんなにすごく声をかけやすくて、何よりも自分にとってもやりがいになっているのが大きいです」
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