加藤未唯は「失格後」の混合ダブルスにどんな思いで臨んだのか 逆境からの優勝に「ようやく笑えて」スピーチにはいろんな思いを込めた (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • 説田浩之●撮影 photo by Setsuda Hiroyuki, AFLO

この記事に関連する写真を見る── 表彰式でのスピーチには、どのような言葉や思いを必ず入れようと思っていたのでしょうか?

「すべての人への感謝でした。自分のコーチだったり、パートナーだったり、来てくれたお客さんたち。たぶん、ミックスダブルスの決勝としてはかなり人が入っていたのと思うので、それにもけっこう驚きました。それだけ応援してくれた方たちがいたということなので、そこへの感謝も伝えたかったです。

(女子ダブルスの)パートナーと、彼女の母国のインドネシアの方たちもたくさん応援してくれたので、その方たちへの感謝と、謝りたかったというのもあります。もちろん、ボールを当ててしまったボーラーにも謝りたかった。

 それと、女子ダブルスの3回戦の相手にも、結果はあんなふうになってしまったけれど、『またいい試合をしよう』と言うことで、自分も前に進めるのかなと思って(スピーチに)入れました。

 あとは、賞金にはそこまでこだわらないんですが、ランキングポイントを取るために、こうやって海外を転戦している。大会にはすでにアピールはしていましたが、もう一度、そこは言いたかったところでした」

── そして表彰式と会見などが終わった直後に、ボーラーに会いに行ったと聞きました。

「はい。大会にお願いして、会う時間を作ってもらいました。コート上でも謝りましたが、やはりもう一度会って、ちゃんと謝りたいと思っていたんです。

 まずは、彼女があの後もボーラーを続けていることに、すごく安心しました。私が試合をしに大会に来ているように、彼女はボーラーをしに来ているわけですから。

 彼女はあまり英語ができなかったので、大会の人が通訳をしてくれながらだったんですけど、会話も交わし、彼女もちょっと笑顔になってくれました。京都の抹茶のお菓子を渡して、『京都わかる? 抹茶好き?』と聞いたら、『もちろん』と返事してくれたのがうれしかったです。

 それに彼女からは、『実は私のお父さんもボーラーをやっていた』という話を聞けました。テニス選手が親からテニスを習ったみたいに、ボーラーにもそういうつながりがあるのだなと......。そういうのも聞けたのは、よかったと思えたことでした」

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