錦織圭の股関節手術はどれほど大変なのか。ふたりの元世界1位も経験した険しい復帰への道 (3ページ目)
【錦織のランキングはどうなる?】
錦織とヒューイットが初めて対戦したのは、この翌年のウインブルドン初戦である。競った内容ながらセットカウント1−3で敗れた錦織は、「苦手なところを攻められた」と、自分と似たタイプの元王者の老獪さに脱帽した。この時、ヒューイットは30歳。
その後、両者は2014年のブリスベーン国際・準決勝でも対戦し、錦織が第1セットを取るも逆転負けを喫している。ヒューイットと錦織の公式戦での対戦は、この2度のみ。錦織が勝利を得られぬまま、ヒューイットは2016年の全豪オープンをもって、万雷の拍手を浴びながら20年のプロキャリアに幕を引いた。2度目の股関節手術後も、3つのツアータイトルを勝ち取っている。
ひと口に股関節の故障といっても、状態は当然ながら個々人で異なりはする。ただ、マリーもヒューイットも、術後4〜6か月で実戦のコートに戻ったのは共通する点だ。
股関節唇の内視鏡手術の一般的なケースでは、痛みが取れるまで3〜4カ月。完治には6〜9カ月かかるという。本人の「6カ月後」という目途に鑑みても、足もとが滑りやすい芝は避け、夏の北米ハードコートからの復帰が妥当な線かもしれない。
なお、その間にランキングは下がるが、公傷で半年以上のツアー離脱者には"プロテクトランキング"が大会エントリー時に適応される。錦織の場合、プロテクトランキングは47位前後。復帰の時期にもよるが、9大会で適応される可能性が高い。
全豪オープンでマリーと対戦したダニエル太郎は、「これだけ体にダメージがあっても、自分の好きなことを続けるために何でも犠牲できる、スポーツへの愛。それを一番尊敬します」と対戦相手に敬意を表した。
オーストラリアの人々が錦織とヒューイットに相似性を見るのは、体格やプレースタイルのみならず、いかなる窮状でも勝利への光を見いだす不屈の精神にある。
錦織も尊敬するふたりの先達が切り開いた道を、彼もまた、歯を食いしばり歩んでいくはずだ。
ダニエル太郎の「マリー撃破」は偶然ではなかった
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