2022.03.12

大坂なおみに突如襲った第3セットの乱調。「硬くなってしまった」のは、実は根深い問題だ

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 2017年の全米オープン優勝者と、翌年の全米オープンを含む4度のグランドスラム優勝者が、WTAツアーの初戦で対戦する----。

 その事実は、昨今の女子テニスの情勢を象徴するようだ。

 称賛や賞金などの華やかなスポットライトが生む、重圧や"燃え尽き"などの影......。それらの闇に行く手を覆われ、迷いの時を過ごす者は少なくない。

全豪OP以来、約2カ月ぶりの試合となった大坂なおみ全豪OP以来、約2カ月ぶりの試合となった大坂なおみ この記事に関連する写真を見る  2019年に世界1位に上り詰めた大坂なおみの現ランキングは78位。そして同年に3位に至ったスローン・スティーブンス(アメリカ)は、先月末にツアー優勝してランキングを上げるも、まだ38位である。

 揃ってランキングを落としたため、早々に実現した"元全米オープン女王"対決。コート内外の障壁とも戦ってきたふたりの実力者の対戦は、強風という不確定要素との戦いでもあった。

"第5のグランドスラム"と称されるBNPパリバ・オープンの開催地インディアンウェルズは、巨大風車が立ち並ぶ砂漠地帯。風は言わばこの地の名物だが、この日のそれは常軌を逸した。

 スタジアムに掲げられた旗は、バタバタと音を立てて、引きちぎれんばかりにはためく。スタジアムの外では、フードコートの巨大パラソルが次々になぎ倒された。コート内には、紙ナプキンからクッションまでが飛び交い、そのたびに試合は中断する......。

 今大会の1回戦最高カードと目された一戦は、ベストとは程遠い環境下で行なわれることとなった。

 両者ともにダブルフォルトを絡めたブレークスタートとなったのは、多分に強風の影響が大きい。コート上では「風が常に一方向に吹いていて、コートのどちらのサイドかによって環境がまったく異なった」と、大坂は述懐する。

 特に、逆風のサイドでのサービスキープにどちらの選手も苦しんだ。コートサイドが入れ替わるたびに主導権も移ろう、落ちつきのない試合展開。

 その風を、持ち味のカウンターやスローボールで味方につけたスティーブンスが、第1セットを6−3で先取する。第2セットは一転、強風のなかでボールを打ち込む力加減を掴んだ感のある大坂が、ラリー戦を支配して6−1で取り返した。