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世界トップのトレーナーが語る、
大坂なおみが持つ「日本人の特性」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Nakamura Yutaka


 あの日にそう感じた中村は、今回のオファーに運命的なめぐり合わせも感じていた。

 加えて大きかったのは、大坂が日本を代表して戦っていることである。

 日本の選手とともに世界の頂点を目指すことは、中村のひとつの目標でもあった。

 IMGアカデミーやシャラポワに加え、過去にオーストラリアテニス協会のトレーナーも務めてきた中村には、蓄積してきた膨大な知識と経験がある。そして、いつかそれらを日本のスポーツ界に還元していきたいとの思いも、人一倍強く抱いてきた。

 その願いを、大坂と関わることによって、実現できるのではないか?

 時間をかけ、自身に幾度か問いただしたが、弾き出される答えに揺るぎはない。マネージャーからオファーを受けた数日後には、中村は正式に『チームなおみ』の一員になった。

「グランドスラムで2度優勝して世界1位になったあと、彼女のなかでも葛藤があり、空回りしていた部分もあったのでしょう。今回のコロナ禍で自分と対話し、そのなかで靴紐を締め直して再出発したいという気持ちが出てきた時、違う声を求めていたのだと思います」

 大坂と会って実際に取り組み始めた時、それが、中村が感じた「自分に求められていること」だったという。

 一方で、トレーナーとしての中村が抱いた大坂の印象は、「身体はまだまだ強くなれるし、動きの鋭さも出せる。動き方は上手だが、ある部分ではまだ硬さが見られる」というものだった。

 加えて得た発見が、大坂が有する日本人的特性だ。

「コート上のプレーは大胆ですが、オフコートでのトレーニングやストレッチでは、僕のデモンストレーションを細かく見ている。そのあたりの繊細な目線や姿勢、それにちょっとした仕草なども、とても日本人らしいですね。

 完璧主義者的な一面も感じます。できないことが、悔しい。それはマリア(シャラポワ)も同じでしたし、そこをいい方向に導いていきたいです」

 中村のトレーナーとしての理念は、指導するアスリートの人間性を理解し、相手にも自身のやり方や性格を理解してもらうことにある。その意味でも、今はお互いを知り、信頼関係を築いていく大切な段階だ。

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