世界トップのトレーナーが語る、大坂なおみが持つ「日本人の特性」 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Nakamura Yutaka


 そのうえで直近の目標は、8月末開催予定の全米オープンと、9月の全仏オープンの両方で結果を出せる身体作りをしていくこと。

 今年は新型コロナウイルスの影響で、通常は5月開催の全仏が全米のあとにずれ込むという、異例中の異例のスケジュールとなった。そのためにハードコートの全米後、間髪入れずクレーコートシーズンに突入する。

 クレーは、キャリア・グランドスラムを目標とする大坂が克服しなければならないコート。そして中村は、シャラポワに2度の全仏タイトルを勝ち取るフィジカルとフットワークを授けた人物でもある。

 中村曰く、「テニスではサーフェス(コートの種類)が変われば、身体の使い方が変わり、スライドの仕方も違う」。そして、クレーの戦いで重要になるのは、適応力。

「とにかくイレギュラーが多いので、身体の微調節が必要になる。柔軟性もそうですし、細かな動き方や繊細さが求められます」

 だからこそ、当面はハードコートの全米に備えながら「クレーに対応できる身体の動かし方も頭に入れ、そのうえでの言葉選びもしながら彼女に接している」と、中村は言う。

 十分な実績がありながらも、若く、未完成でもあるアスリートに携われることは、指導者として究極の喜びでもあるだろう。

「本当に、ただただ楽しみ。彼女は身体の出力が高くて、動けるアスリート型の選手。テニス界で五指に入るアスリートだと思います。そこに対して、自分がプログラミングしていける楽しみもあります」

 約20年に及ぶトレーナーとしての知識と経験のすべてを、中村は大坂なおみという、しなやかな大器に注ぎ込みたいと言う。

 その先で目指すのは、テニス史上に名を残し、スポーツの枠組みも超えて人々の心を動かす存在だ。

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