大坂なおみが歓喜を爆発させない理由。
目指すはレジェンドよりレガシー (3ページ目)
「子どもの頃は、お父さんにビデオで撮ってもらいながら、会見の練習をしていたの。その頃は、すごくおしゃべりだったのにな......」
そう照れた笑みをこぼす彼女は、冗談や、はにかんだ口調のオブラートに包みながらも、時に豪胆にも響く印象深いひと言や、勝負師としての哲学を短い言葉に落とし込んだ。
ストーサーとの試合で、自身にまず言い聞かせたのは「見ている人たちの度肝を抜くような"特別な何か"をしよう」ということ。
観客たちが、スタープレーヤーであるストーサーを応援するであろうことはわかっていた。ならば、自分は名刺代わりの超高速サーブで、自らが何者であるかを人々に知らしめ、スタジアムの空気を変えることを考えていたという。
そして勝利の瞬間----、彼女はこの時も、それがさも当然だとでもいうかのように、淡々とネット際へと歩みを進め、ストーサーと握手を交わす。
「興奮しすぎてはいけないと思っていた。時々、勝つとラケットを投げたり、叫ぶ人がいるけれど、私は落ち着いてネットまで歩いていこうと思ったの。
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