2020.04.19

大坂なおみが歓喜を爆発させない理由。
目指すはレジェンドよりレガシー

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 勝利し、喜びを爆発させる彼女の姿を、まだ見たことはないように思う……。

 BNPパリバ・オープン(インディアンウェルズ)でツアー初優勝の栄冠を掴んだ時は、ファミリーボックスへと向けた顔に、輝く笑みを広げるのみだった。

今年の10月で大坂なおみは23歳になる その6ヶ月後に全米オープンで敬愛するセリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)を破り、手にしたグランドスラム初優勝は、主審の判定を巡る狂騒のなかで悲しみの涙に彩られた。

 グランドスラム連続優勝を成した全豪オープンでは、緊張から開放された安堵のため、勝利の瞬間、その場に崩れるようにしゃがみこんだ。

 多くの選手が優勝や金星獲得時に見せる歓喜の雀躍(じゃくやく)や、コートに大の字に倒れこみ涙にむせぶ姿を、彼女はまだ公の場で見せたことがない。

 初めて彼女と話したのは、2014年、岐阜の長良川テニスセンターで行なわれた、ツアーの下部大会に相当する賞金総額6万ドルの国際大会だった。

 その日は雨で、試合が行なわれたのはインドアコート。16歳のその少女は、屋内施設に響きわたるサーブやストロークのインパクト音で見る者を驚かせるが、ミスも多く、試合には競り負ける。