錦織圭が今季3度目でようやく見つけた「ジョコビッチ攻略法」 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 しかし、この場面でジョコビッチは、次々にセンターにエース級のサーブを決めて危機をしのぐ。ドロップショットや高く弾むスピンを操る錦織の創造性と、重要な局面でこそプレーの精度を高めるジョコビッチの強さの精髄が光る、幕開けであった。

 先行する好機を逃したものの、その後も錦織の攻勢は続く。左右にボールを打ち分け、機を見てトリガーを引くように全力でフォアをオープンコートに打ち込む。あるいは王者の平常心を揺さぶるように、ドロップショットをネット際にフワリと落とす。そのたびに、無敵の王者を翻弄する錦織に向けて、判官贔屓を好むスペインの観客から熱い声援が送られた。

 ただ、それでも試合の分岐点となる数ポイントを確実に掴み取ったのは、ジョコビッチのほうである。第1セットの第7ゲーム、完璧なドロップショットを沈めて自らを鼓舞したジョコビッチは、続く第8ゲームで錦織のドロップショットミスに付け込み、このゲームをブレーク。2本のドロップショットが命運を分け、第1セットをジョコビッチが奪取した。

 第2セットも、マドリードの週末の夜を彩るに相応しい、エンターテイメント性に満ちた攻防は続く。第1ゲームで面したブレークポイントを、17本の激しい攻防の末に錦織がフォアのウイナーでしのいだときは、この日最大の歓声がスタジアムを揺るがした。

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