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わずか1時間56分。錦織圭が「ひらめいた」クレー勝利の方程式 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 そのような革新が可能だったのは、そもそも錦織が、「相手の時間を奪うテニス」を得意としたことだ。そして昨年から、その速い展開力に一層の磨きを掛けるべく、ショットの精度向上などに取り組んできたからである。自分が目指すテニスと、クレーでの新戦術――。そのふたつが同じ方向を向いていたことが、彼からクレーでの迷いを取り払い、ゴールへの最短ルートを走らせている。

「自分のテニスが良くなったことに加え、クレーでの取り組み方を変えてきたことが、クレーでも活躍できているキッカケだと思います」

 いつも通り、穏やかながら、確信と力強さに満ちた口調で、彼は明瞭に説明した。

 相手の時間を奪うように攻めてポイントを重ねていく流れは、快調なリズムを生み、強風を背に受けたような加速をもたらす。第2セットの第3ゲームでは、深く速いストロークで押し込み、相手が返した浮き球を「エアK」で叩き込んで、さらにリズムに乗った。あまりのスピード感に乗り過ぎたのか、ゲームカウント5-1とした場面で、チェンジオーバーと勘違いしてベンチに座ってしまったのは御愛嬌。試合中に断続的に小雨が降り、足もとの土も、水を含んだボールも重くなっていく中で、錦織の足取りだけが最後まで軽快だった。

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