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【テニス】ジョコビッチ、43年ぶりグランドスラム達成のカギは? (2ページ目)

  • 内田 暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 今回のジョコビッチのように4大会連続優勝にリーチを掛けながら、最後の最後で涙を飲んだ選手たちもいる。4大大会通算14勝の大記録を持つピート・サンプラスは、1993年の全英と全米、そして1994年の全豪を優勝して、最後のピースを埋めるべく、全仏に挑んだ。だが、彼の夢は準々決勝でアメリカの同胞、ジム・クーリエにより打ち砕かれる。結局サンプラスは、輝かしい15年のキャリアにおいて、ついに全仏だけは手にすることがなかった。

 記録達成に何度も肉薄したのは、ロジャー・フェデラーだ。サンプラスに憧れ、プレイスタイルもサンプラスと酷似するフェデラーは、2006年と2007年の2度にわたり、やはりサンプラス同様、グランドスラムにリーチを掛けた状態でパリへと乗り込んでいった。しかもフェデラーは、2度とも全仏の決勝にまで駒を進めたのである。だが、フェデラーにとっての最大の不幸は、史上最強のクレー選手と賞賛されるラファエル・ナダルが、同時代に存在したこと。ナダルは2度とも、フェデラーの夢と野心を赤土の上で粉砕した。

 そのナダル自身もまた、グランドスラムに一歩届かなかった悲劇の英雄である。2010年の全仏に始まり、全英、全米で優勝したナダルは、翌年の全豪を制すればグランドスラム成立であった。そしてこのナダルが、サンプラスやフェデラーらと異なっていたのは、グランドスラムにリーチとなった大会を過去に優勝していたことにある(ナダルは2009年に全豪初優勝)。実績的にも実力的にも、大記録を達成するポテンシャルは十分に持っていたはずだった。

 そのナダルの進撃を止めたのは、フェデラーでもジョコビッチでもなく、準々決勝の最中に突如彼を襲った、負傷である。それでも第1シードの責任からだろうか、痛む足を引きずりながら最後までコートに立ち続けた姿は、あまりに痛々しく悲壮であった。

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