2012.06.01

【テニス】ジョコビッチ、43年ぶりグランドスラム達成のカギは?

  • 内田 暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

ボルグ、マッケンロー、レンドル、サンプラス。一時代を築いた彼らですら成し得なかった偉業に挑むノバク・ジョコビッチ 5月27日に開幕した全仏オープンでは、43年ぶりの大記録が掛かっている。

 偉業に挑むのは、世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ。

 高峰にそびえる記録とは、全豪、全仏、全英、そして全米のメジャー4大会の連続制覇……、つまりは『グランドスラム』と呼ばれるテニス界最高の栄誉である。ジョコビッチは昨年の全英に始まり、今年の全豪に至る3つの大会をことごとく制してきた。もし、今大会を制すれば、それは彼にとって全仏初優勝になるとともに、4大大会の『完全制覇』も意味するのだ。

 古(いにしえ)の人たちは「十年ひと昔」と言ったものだが、選手寿命が短く、移り変わりの激しいスポーツの世界において、10年の歳月の持つ意味合いは通常のそれと大きく異なる。43年前といえば、それは悠久(ゆうきゅう)にも近い時をさかのぼる太古の話だ。

 そのような時代の流れにおいて、実は『グランドスラム』という言葉の定義そのものも、変化を強いられてきた。元来、グランドスラムは1月から始まる4大会を、年をまたがずすべて制することだったが、難易度があまりに高いためか、現在のITF(国際テニス連盟)要項には「4つの大会をすべて、一度に続けて制すること」と定められている。だが、そのように定義を押し広げたにもかかわらず、1969年に年間グランドスラムを成したロッド・レーバーを最後に、4つの大会を連続で制した者は現れていない。以降、目まぐるしく移ろう王者の系譜は、数々の名選手たちのグランドスラムへの夢を過去へと押し流し、今日まで続いている。
 
 その43年の間、グランドスラムに最も近かったのは、1974年のジミー・コナーズだろう。彼はこの年、全豪、全英、そして全米を制してテニス界を席巻したが、実は全仏には出場すらしていない。それは、コナーズが1972年に発足したATP(男子プロテニス協会)の反対を押し切り、ワールドチームテニスと呼ばれるイベントに出場したことで、全仏への出場が認められなかったためである。勝負事に「もしも」は禁物と言われるが、仮にコナーズがこの年の全仏に出ていたなら、グランドスラムの歴史も書き換えられていたかもしれない。