検索

なぜ野球界の名伯楽が東大ラグビー部に 中垣征一郎と高橋一聡が紡ぐ「30年越しの東大レッグドライブ」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

【託された東大レッグドライブの習得と完成】

 一聡が中垣にまず託したのが、『東大レッグドライブ』の習得と完成だった。飛び込むだけの東大タックルでは、相手に当たったあとの身体をコントロールできない。当たったあとにも足を動かし続けて地面を押し、いい姿勢をつくって相手の身体制御を崩そうという東大レッグドライブ──中垣は一聡の想いをこう理解した。

「一聡と僕は、その話を30年続けているわけですよ。東大レッグドライブという言葉がなくても、一聡が目指す形は説明してもらわなくてもわかる。『こういうことでしょ』と構造を説明したら、一聡も『そうそう、これこれ』って。一聡は『中垣さんがわかっていることなんて、とっくにわかってる』って感じで、驚きもしません(笑)」

 中垣は東大の選手たちに『東大レッグドライブ』を、こう説明した。

「『これは勇気と気合と日々の筋力トレーニング、そんなものだけでつくれるものじゃない、力づくで飛び込むものじゃないんだ』と話しました。選手の何人かには"力積(りきせき)"という言葉を使って説明したんです。座標軸上の縦軸が力の大きさで、横軸が時間で表す力積で説明すると、飛び込んで瞬間的に当たったら力積は小さくなるけど、当たってグーッと押仕込めば時間の分、力積は大きくなる。これがタックルとレッグドライブの違いです。

 トップ選手たちは、もちろんそういったタックルをやっている人がたくさんいます。玉砕覚悟ではなく、相手にぶつかったあと、次の一歩、いや一歩半までグーッと動き続けるためにはどういう姿勢で当たればいいのか。重心の位置はこう、下肢三関節の屈曲姿勢はこう、地面をしっかり捉えて脚で地面を押せば力はこう跳ね返ってくるから狙った方向へ自分の身体を最大値で持っていくためにはこう、その地面反力をもっと大きくするためのスクワットのやり方はこう、片足でやらなきゃいけなくなった場合の片足スクワットのやり方はこう。

 これがすべて、地面反力をコントロールして自分自身が狙った方向へ力を加えたり、身体を動かしたりすることの基礎になるから、と......下肢三関節とか地面反力とか、いったん説明したらこういう言葉を日常遣いできるようになるのは、東大ならではのおもしろさですよね」

2 / 3

キーワード

このページのトップに戻る