なぜ野球界の名伯楽が東大ラグビー部に 中垣征一郎と高橋一聡が紡ぐ「30年越しの東大レッグドライブ」
最強のふたり〜東大ラグビー再生物語(全6回/第5回)
トン、トン、トン。
トーン、トーン、トーン。
ある日、東大ラグビー部の駒場グラウンドへやってきた中垣征一郎は、選手たちに走り方というものを説明して聞かせた。東大のフォワード、第3列の要となるNo.8の領木彦人(りょうき・げんと)はこう振り返る。
選手に走り方の指導をする中垣征一郎氏 photo by Sportivaこの記事に関連する写真を見る
【野球界の名伯楽が東大ラグビー部へ】
「最初、帽子を被ってる"変なオッサン"が"変な音"を声に出しながら、『トン、トン、トン』『こうやって走るんだよ』って......何、これ? と思いましたよ(笑)。20年以上も生きてきてずっとこの走り方なんだから、今さら走り方なんて成長するわけないじゃんと思っていたら......あれっ、なんか変わったなと感じた瞬間があって。
とにかく疲れないんですよ。コスパよく走れている。こんなに走り方について熱弁できる人がいるんだと思ったし、こういう話も信じたほうがいいんだ、インチキじゃなかったんだと驚きました(笑)」
中垣の野球界での履歴を辿ればダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)や大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)の名前が挙がり、オリックス・バファローズをリーグ3連覇に導いた名将・中嶋聡の信頼が厚いことがわかる。そんな野球界の名伯楽がなぜ東大ラグビー部にやってきたのか──ヘッドコーチの高橋一聡が説明する。
「中垣さんと会ったのは20代の頃だから、30年くらい前かな。僕が明治から伊勢丹のラグビー部でプレーしていた時、中垣さんがトレーナーとしてチームに来てくれて......その時、この人はわかってくれるという思いがあったんです。ラグビー選手同士で話してもなかなか伝わらない本質が中垣さんには伝わったし、伝わってきた。この人と話していたらおもしろいというだけで30年が経ちました(笑)。
僕も面倒くさい性格でこだわりも強いけど、中垣さんも頑固で面倒くさいことばっかり言う。でも、ずっとチャレンジし続けているのは本当にすごいと思っていたし、箔もついていて知識も経験もある中垣さんが、何もできない、教わったこともない状態の選手たちに話をしたら何か変わるんじゃないかと思いました」
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著者プロフィール
石田雄太 (いしだゆうた)
1964年生まれ、愛知県出身。青山学院大卒業後、NHKに入局し、「サンデースポーツ」などのディレクターを努める。1992年にNHKを退職し独立。『Number』『web Sportiva』を中心とした執筆活動とともに、スポーツ番組の構成・演出も行なっている。『桑田真澄 ピッチャーズバイブル』(集英社)『イチローイズム』(集英社)『大谷翔平 野球翔年Ⅰ日本編 2013-2018』(文藝春秋)など著者多数。
























