ラグビー早稲田が明治にリベンジできた理由。全部員の結束と4年生の「プライド」 (2ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 井田新輔●撮影 photo by Ida Shinsuke

【早大がコラプシングの反則奪う】

 あえて勝負のアヤを言えば、早大が、後半中盤、明大得意のスクラムでのコラプシング(故意に崩す行為)の反則を連続で奪ったことだろう。後半、交代で入ったプロップ(PR)井元正大、フッカー(HO)佐藤健次の頑張りだった。

 とくに相手ボールのスクラムでコラプシングの反則をもぎ取ったのは大きい。バックス(BK)から、「フォワード(FW)、サンキュー!」の掛け声が何度も飛んだ。チームが勢いづいた。

 数本だけながらも、早大は劣勢だったスクラムでなぜ、優位に立てたのか。佐藤は胸を張る。

「プライドを持って、全員がやるべきことを果たした結果です。自分たちの間合いや位置で組めたからです。しっかりアジャスト(調整)できました」

 後半17分。自信を得た早大はフリーキックでスクラムを選択。そこから準備したサインプレーで、WTB松下がトライを加えた。さらに2分後、スクラムハーフ(SH)宮尾昌典がインターセプトで約75メートルの独走トライを奪った。ゴールも決まり、27―14とリードした。

 だが、後半28分、奮起した明大にスクラムで度重なるコラプシングを奪われて認定トライを献上した。6点差とされ、早大はその後、防戦一方となった。

 だが、粘った。我慢した。最後は気持ちだった。雪辱に懸ける15人の結束だった。

【ノンメンバー4年生の早明戦の熱量】

 大田尾監督は「よく頑張った」と言った。安堵の言葉が続く。

「試合に登録された23人だけじゃなく、部員150人が、対抗戦が終わったあとから成長したことが、今日の試合につながったんだと思います。うれしい勝利ですね」

 実は、1週間前の日曜日(12 月18日)、明大の八幡山のグラウンドで明大とノンメンバーの4年生同士の練習試合が行なわれた。スコアでは敗れたけれど、4年生の明大に挑みかかる気概は胸を打つものだった。みな、からだを張った。

 4年生の吉村は「見ていて、ワセダの文化を思い出しました」と述懐する。

「最近薄れてきたワセダらしさです。大きい相手に向かっていくとか、こぼれ球に懸命に反応するとか。ひたむきに自分のできることをやり続ける大事さを教えてもらいました」

 3年生のSO伊藤はこうだ。

「去年の負けからのリベンジ精神と、ワセダのプライドが見てとれたんです」

 大学ラグビーでは、冬場の大学選手権に入って、各チームが成長の度合いを増す。負けたら終わりだ。その成長を促すのが、4年生を中心とした全部員の熱量だろう。

 早大にとっては、2年ぶりの年越しとなる。昨年はラグビーで越せなかった年を越せる、その感想は、と聞かれると、大田尾監督は「うれしいというのが率直なところです」と漏らし、しみじみと続けた。

「この時期になると、チームがぐんぐん成長してきて、いまのチームでもう1週、もう1週やりたいという欲がものすごく出てきます。でも、去年は志半ば、ここで負けて......。今年はチームワークという意味ですごく伸びています。少なくともあと1週間は見られますね」

 さあ、次の準決勝の相手は関西の雄、京産大である。明大と同じく、FWは強力だ。どこまで我慢できるか。結束できるか。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る