15人で勝ったんじゃない、150人で勝ったんだ。ひとつになった早稲田大は「明治の壁」を超えられるか (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

【人生で一番悔しかった敗戦】

 そして、決め手はBK陣の連係だ。吉村が「最初の攻撃からフェイズアタックは通用すると思っていた」と胸を張ったように、安定したセットプレーからボールを継続。早稲田大が武器とするボールを端から端まで動かすワイドアタックで、後半26分・33分に槇瑛人(4年)と松下怜央(4年)の両WTB(ウィング)がトライを挙げて、勝負を決した。

 勝因はやはり、短い準備期間ながら東洋大の強みを紐解いた分析力と、試合が始まって劣勢になっても冷静に対処した修正力に尽きるだろう。FWがセットプレーを安定させて、ディフェンスで規律を保って相手陣で戦い、高速BKが実力を発揮する──。すべてが噛み合い、それが勝利に結びついた。

「(試合に出ている)僕たちだけでなく、いろんな部員が協力して力を出し合っての結果です。『15人だけでなく150人いる』と試合中にも言っていて、いい形でワンチームになれている。次の試合も150人で、いい形で準備したい」(佐藤)

 早稲田大は12月25日、昨季と同様に準々決勝で明治大と対戦することになった。昨季は15-20でシーズンを終えた。大田尾監督は「昨季と同じタイミングで対戦ですが(今季は)何が何でも勝ちたい」語気を強める。

 佐藤も鼻息は荒い。

「去年、同じ時に明治大に負けた。人生で一番悔しくて、あの負けはずっと残っている。(明治大は)超えなければいけない壁。ターニングポイントになる一戦。この壁を超えたら、早稲田が強くなれるチャンス」

 早稲田大はFWの強い東洋大に勝利したことで、大きな自信になったはずだ。12月25日、今季2度目の「早明戦」でリベンジに挑む。

【筆者プロフィール】斉藤健仁(さいとう・けんじ)
スポーツライター。 1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。2000年からラグビーとサッカーを中心に取材・執筆。ラグビーW杯は2003年から5回連続取材中。主な著書に「ラグビー『観戦力』が高まる」「世界のサッカーエンブレム完全解読ブック」など多数。

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