15人で勝ったんじゃない、150人で勝ったんだ。ひとつになった早稲田大は「明治の壁」を超えられるか (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

【ハーフタイムで下した決断】

 前半29分の早稲田大の失トライは、マイボールのラインアウトをスティールされたことが要因だった。さらに「強み(であるラインアウト)をぶつけよう」(東洋大LO齋藤)の言葉どおり、東洋大は後半5分まで5度あったPG(ペナルティゴール)のチャンスをすべて狙わずタッチに蹴り、ラインアウトからモールを形成して2本のトライを奪った。

 ハーフタイム。先に動いたのは、早稲田大のほうだった。

 ケガの影響もあって控えに回っていたHO(フッカー)佐藤健次(2年)とLO前田知暉(4年)を、大田尾監督は後半開始から投入。「(スクラムでペナルティを取られたので)佐藤を出すしかないと思った。前田のラインアウトのコンテストスキルにかけてみよう」(大田尾監督)。

 また、ゲームキャプテンの吉村も冷静だった。「焦りはありましたが、チームとして乱れなかった。無理しすぎない時にハイボールを蹴って敵陣に入ろう、消極的なプレーをするのではなく目の前のタックルやキックチェイスにこだわっていこう、と声をかけた」。

 実は東洋大戦の1週間から、早稲田大はラインアウトと相手のハイボールやロングキックの処理に対して準備を進めていたという。大田尾監督は「ほとんどの局面で精度の高いキック処理ができた。マイボールラインアウトは1本スティールされましたが、早明戦で苦しんだところを立て直すことができたのは大きかった」と満足そうに振り返る。

 スクラムも前半こそ苦しんだが、後半は相手から反則を取るなど優勢な場面も出てきた。後半から出場してチームに勢いをもたらした佐藤は「ラインアウトは副将のLO鏡(鈴之介)さんが相手の分析をやってくれたから。スクラムは(前半に出ていたHO)安恒(直人/2年)に感覚を掴ませてもらった。彼の前半の頑張りが僕の後半のプレーに活きた」と仲間の献身を称えた。

 スクラムとラインアウトが安定すると、反則数は前半8つから後半3つまで減少。相手陣でのプレー時間が増えていき、試合の流れは早稲田大へと傾いていった。

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