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ラグビー日本代表、新戦力のふたりが躍動。FL下川甲嗣とSO中尾隼太の魅力とは? (2ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●撮影 photo by Saito Ryutaro

「すごく楽しくプレーができた」

 前半終了間際だった。スコアが日本9-6のリード。相手の猛反撃を受け、自陣の22メートルラインを切られた。ピンチだ。刹那、下川はボールを持った豪州選手に襲い掛かった。ジャッカルだ。相手はたまらず、ペナルティーを犯した。日本は窮地を脱した。

 試合終了後のミックスゾーン。下川は腕を組み、にこやかな笑みを浮かべた。「よかったと思いました」と、値千金のプレーを述懐する。

「相手を分析する中で、内側のサポーターが遅いというリポートがあって、そこを狙っていこうと考えていました。たまたま、あの時、あのタイミングで、"あっ、チャンスが来た"と思って、入ったんです」

 ジャッカルのコツは。

「相手が遅れたと見えた瞬間、ただ相手より先に仕掛けることです」

 後半10分、スタンドの拍手を受けながら、下川は姫野和樹と交代した。「正直、80分間、出たかったんですけど」と少し笑って続けた。言葉に充実感がにじむ。

「個人的には、すごく楽しくプレーができました。結果は負けてしまいましたけど、全部が全部、悪かったわけじゃない」

 それにしても、リーチはすごかった。80分間、フルに暴れ回った。リーチは練習では、よく下川にアドバイスを出す。顔に擦り傷をつくったリーチは言った。優しさが漂う。

「(下川は)よかった。コンタクト強かったし、ジャッカルもできた。でも、たぶん、自分の持ち味をまだ出しきれてなくて、悔しい顔をちらっと見せたよ」

 下川は188センチ、105キロ。福岡県出身。草ヶ江ヤングラガーズで走らされ、修猷館高校でもひたすら走り続けた。「スターぞろいのヒガシ(東福岡)に勝つためには一人ひとりの仕事量で上回るしかなかった」。早大を卒業し、昨年、サントリーに入った。リーグワン1年目の活躍がジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)の目に留まった。ことし3月、右足ふくらはぎの肉離れで戦列離脱。9月の代表合宿から合流した。次の第2戦(8日)の会場は故郷の福岡。

 下川は言った。

「しっかりリカバリーして、セレクションでまた試合メンバーに選ばれるよう頑張ります」

SO中尾も攻守に貢献

 SO中尾もまた、新たな一歩を歩み出した。力強く。開始直後、約42メートルの長い中央の先制PG(ペナルティーゴール)を蹴り込んだ。沈着冷静。「落ち着いて蹴れました」と言う。

 後半中盤には比較的簡単なPGを失敗したけれど、4PGで12得点をマークした。司令塔の10番としては、キックを絡め、ゲームを的確にコントロールした。低く堅実なタックルも光った。疲労の見えた後半26分に交代。ジョセフHCは「チームをうまくリードしてくれた」と及第点をつけた。

 ミックスゾーンで中尾は10数人の記者に囲まれた。緊張から解放され、安どの表情を浮かべる。今の気持ちは?

「正直、ちょっとホッとしたなというのはあります。でも、できない部分などが自分でわかったので、いい反省材料ができました。また修正して、次にチャンスがあれば、それを使っていきたいなと。これから、もっと良くなっていけると思っています」

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