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ラグビー日本代表、新戦力のふたりが躍動。FL下川甲嗣とSO中尾隼太の魅力とは? (3ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●撮影 photo by Saito Ryutaro

 中尾は、ラグビーのトップ選手としては異色のキャリアだろう。176センチ、86キロ。長崎県出身。長崎中央ラグビースクールでラグビーを始め、長崎北陽台高校では2年の時に全国高校大会に出場した。国立大学の鹿児島大学でもラグビーに打ち込み、九州学生代表でのプレーが評価され、2017年、東芝(ブレイブルーパス東京)に入社した。小学校と中高校(保健体育)の教員免許を持つ。好きな言葉が「置かれたところで咲きなさい」。

 とにかく、いつも一生懸命である。リーグワンで全試合に出場し、日本代表合宿に呼ばれたが、6、7月のテストマッチ(国別対抗戦)には出場できなかった。この日はキャップ非対象ながら、ゲームの価値は代表戦とそう変わらない。この1週間、緊張が続いていたそうだ。

 中尾は「自分の持っている力を出しきることができました」と漏らした。言葉に安ど感と悔しさがにじむ。

「自分のプレーに対する悔しさもある。後半に入って、判断やプレーの精度はちょっと落ちてきたなというのを実感しました。やっぱりキックのところとか、攻撃の方向性、コントロールしていくというところは、もうちょっと理解を深めていかないといけないかなと思います」

 試合は、日本代表がラスト20分、我慢しきれなかった。とくにディフェンスの厳しさが薄れた。規律も精度も落ち、豪州Aに3連続トライを許した。逆転負けを喫した。

 記者会見。"代表デビュー"の下川、中尾の評価を問われると、ジョセフHCは硬い表情を少し、緩めた。

「たくさんの観衆の前で、自分の仕事を遂行してくれた。いい経験になったでしょう」

 もっとも、バックローもSOもポジション争いはし烈だ。今回は、下川も中尾も他の有力選手のコンディション不良のため、出場チャンスが巡ってきたにすぎない。勝負はこれからだ。頼もしい新戦力の参戦で、来年のW杯に向けた日本代表のポジション争いが俄然、オモシロくなってきた。
               (了)
 

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