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「絶対やってはいけないことを、やってしまった」。ラグビー全国大学選手権で早稲田が明治に敗れたわけ (3ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • photo by 齋藤龍太郎

 この1年はこの日のためにあった。大田尾新監督を迎えて、ざっと40週間、練習してきた。コロナ禍も工夫して、チーム強化にあたった。昨季の大学選手権決勝においては、天理大にブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)で完敗した。

 だから、アトランタ五輪レスリング銅メダルの太田拓弥さんを招請して、接点、下半身の強化にまい進してきた。課題のスクラムは、大田尾監督のヤマハ時代の同僚、元日本代表PRの仲谷聖史さんにコーチになってもらい、きめ細かい指導を受けてきた。

 だが、早大はFW戦で後手を踏んだ。小林副将は、「1年間積み上げてきた接点の部分で正直、明治大学さんが上回っていた」と漏らした。「だから、自分たちのやりたかったラグビーができなかったという印象です」

 今年の4年生は才能にあふれる。エース、FB(フルバック)の河瀬諒介もまた、再三、ラインブレイクをした。

 でも、強引さが目立った。ゴールラインを割ることができなかった。ラグビー場の帰途、河瀬の父、かつて"怪物"といわれた元日本代表の明大OB、河瀬泰治さんと偶然、一緒になった。長男にかける言葉は?

「いろんなこと言われながら、4年間、早稲田でよう、やってくれたわ。ひと言でいえば、"ごくろうさん"やな」

 人は、しょっちゅう失敗をする。チームも時には負ける。要は、そこで、どうするか。屈辱と後悔を、苦闘と鍛錬の先の栄光へと結ぶのか。大学日本一になった時の勝利の部歌、『荒ぶる』へどうつなげるのか。

 2年生のSO伊藤はこう、言った。潔い。

「いろんな失敗はあったんですけど、試合を重ねるにつれて、ちょっとずつ成長できたのかなと思います。勝機はあったけど、目指すラグビーはできなかった。結局は完敗だったのかなと思います」

 ため息をつき、涙声でこう、続けた。

「4年生と一緒にできたラグビーは楽しかった。次は上級生になるので、もっと、もっと、頑張っていきたい」

 荒ぶる復活へ、挑戦は続くのだ。

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