「絶対やってはいけないことを、やってしまった」。ラグビー全国大学選手権で早稲田が明治に敗れたわけ (2ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • photo by 齋藤龍太郎

 早大の今季のスローガンが『Be Hungry』、この日のゲームテーマは『ドミネイト・ザ・ゲーム』だった。この1年、積み上げてきたものを明大にぶつける。試合を圧倒しよう。接点でも、どこでも相手を圧倒しよう。そういった意味だった。

 試合後の記者会見。大田尾監督は「自分たちのやってきたことをやりきれるかが勝負のポイントでした」と言った。

「トライを取りきらなければいけない時に取りきったチームが勝った。そういうことだと思います」

 先の早明戦は欠場。ケガから復帰したCTB(センター)長田智希主将はこうだ。

「負けたら終わりの選手権。緊張感、プレッシャーはあった。思いきりチャレンジした結果だから......。でも、トライを取りきることができませんでした」

 勝負のアヤをいえば、後半13分頃の早大の攻めだっただろう。スコアが早大15-13の場面。ライン攻撃からSO(スタンドオフ)の伊藤大祐が抜け、WTB(ウイング)小泉怜史につなぎ、ゴール直前でノーマークのSH(スクラムハーフ)の1年生宮尾昌典にパスした。

 これを、宮尾が痛恨の落球。ど真ん中にトライしていれば、おそらくゴールも決まり、スコアは9点差となっていた。両チームに与える精神的インパクトは大きかったはずだ。そのシーンの印象を聞かれ、大田尾監督は苦笑しながら、こう言った。正直だ。

「どう思うかと聞かれたら、"何やってんだ"としか思わなかったですけど、ああいうところで(トライを)取りきれないとなかなか大一番に勝つことはできません。"たられば"ですけど、スコアしていたら、お互いの戦い方、メンタル面のプレッシャーも違っていたでしょう。明治さんはただただ、"ラッキーでした"。うちとしては、"ほんと、痛かったですね"といった感じです」

 そのほかにも、早大は簡単なペナルティーゴール失敗、パスすればトライの判断ミス、タッチキックミス......。ゲームメーカーのSO伊藤はこう、ぼそっとこぼした。

「ワセダが絶対やってはいけないことを、やってしまいました」

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