ラグビー日本選手権決勝。ヤマハ、どん底から日本一への道程
真っ青な冬空の下、水色の大漁旗が舞う。水色に染まったバックスタンドのヤマハ応援団が大きく揺れた。どん底から、ついに日本一。ヤマハ発動機の清宮克幸監督はその風景を見やり、目を潤ませた。
「あのバックスタンドの、あの姿が見たくて、この仕事をやっているので......。もう、うれしくて。やっと、ひと仕事、果たせました」
選手、スタッフに胴上げされるヤマハ発動機・清宮 克幸監督
ヤマハラグビー部のクラブハウスにあった、10数年前の関西社会人リーグ優勝時のパネル写真がだぶる。本社の業績不振によるチーム支援の縮小、トップリーグ降格の危機に瀕したチームの監督に就任したのが2011年。早大、サントリーに次ぎ、ヤマハでも優勝を目指し、「奇跡を起こす」と何度も口にしてきた。勝負師のコトバが安ど感に満ちる。
「ファンと選手が一体となった大きなパネルと同じ風景が今日、あった。きっと、いい写真が撮れていると思います。"ヤマハスタイル"を貫いた結果が勝利になりました」
2月28日のラグビー日本選手権決勝(秩父宮ラグビー場)である。ヤマハは自分たちの持ち味を存分に発揮し、15-3でサントリーを破り、初優勝を飾った。ヤマハスタイルとは何と言っても、安定したスクラム、ラインアウトである。
チームの成長は、22mライン内でのプレーの精度に見てとれる。前半7分の先制トライは左のラインアウトからの右展開、同26分の2つ目のトライはスクラムを押し込んで相手反則をもぎ取ってからの左オープン展開だった。きっちりと仕留めた。
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