ラグビー日本選手権決勝。ヤマハ、どん底から日本一への道程 (3ページ目)
結局、準決勝の東芝戦に続き、この日もサントリーをノートライに抑えた。後半、五郎丸歩がシンビン(一時的退場処分)を受けた10分間もゴール前の鉄壁防御が光った。
終了間際、サントリーのフルバック塚本健太に走られた時、ヤマハのスタンドオフ大田尾、ウイング伊藤力がむしゃぶりつき、ノックオンを誘った。この執念、意識の高さはどうだ。
主将の三村勇飛丸(ゆうひまる/フランカー)は勝利に浸りながらも、来季を見据える。「4年間、積み上げてきたことが間違いじゃなかったと改めて感じました。まだまだ成長できるチームだと思う。現状に満足することなく、もっと上を目指していきたい」
日本一の最大の要因は?と問われると、しばし考えた。隣の清宮監督に耳打ちされ、主将は小声で漏らした。「あの、スクラムだと思います」
すかさず、清宮監督が補足する。「ヤマハがなぜ強いのかと問われると、常に相手を上回るスクラムとラインアウト、モールがあるということです。それに尽きます。安定したセットがあってはじめて、ゲームを組み立てられます」
スクラムハーフの矢富勇毅(やとみ・ゆうき)は大泣きした。「いろんなことがぶわっとこみ上げてきて」と照れる。矢富は両ひざの大ケガから復活した。「ケガの時とか、縮小の時とか、苦しい時もあったので……。涙が止まらなかった。苦労が報われたというか、僕たちが選んだ道は間違いじゃなかったんです」
5年前、チーム支援が縮小された時、約半数の部員がチームを去った。当然、チーム力は激減した。サントリーにはTL(トップリーグ)で大敗した。屈辱だった。その時のスタンドのヤジが耳に残る。<チケット代、返せ!><おまえらふざけるな!>
その年はTL11位に沈み、入れ替え戦に回り、2点差で辛勝した。どん底だった。選手たちは悩みに悩んだ。他チームからの誘いを断り、ヤマハに残留したのが、現在30歳の矢富ほか33歳の大田尾、山村、日本代表フルバックの五郎丸歩たちである。
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