中国キラー・伊藤美誠をつくった「バケモノのような選手」にする訓練
先日、スウェーデンのハムスタッドで開催された世界卓球選手権(団体戦)。決勝に進んだ日本の女子代表は、3大会連続で中国の壁に屈した。しかし、その試合の一番手として、元世界ランク1位の劉詩ブン(=雨かんむりに文の旧字体)をフルセットの激闘の末に大逆転で破った伊藤美誠(みま/スターツSC)のプレーは、今大会で最も強いインパクトを残したのではないだろうか。
世界卓球の決勝で中国の劉詩ブンに勝利した伊藤 長い卓球史のなかで最高の結果を残してきた中国卓球の模倣ではなく、「型破り」あるいは「奇想天外」とも称される独創的なアイデアと繊細なボールタッチ、多彩な技術で強固な牙城の一角を崩したのだ。「今度は日本が中国を倒すという思いでやっていきたい」と語った17歳は、どのように唯一無二のプレースタイルを身につけたのか。練習パートナーの証言や、過去の取材ノートから考えてみたい。
伊藤の才能が凝縮された"ミラクルショット"
卓球王国の威信を背に戦う中国のトップ選手たちは、一本一本の重みが増してくる終盤になればなるほど、無類の勝負強さを発揮する。その中心選手として長く国際舞台で活躍してきた劉詩ブンを相手に、フルゲームまで持ち込んだ全日本女王もまた、最後はその底力に屈してしまうのか。
伊藤自身が「あのポイントがなければ、粘りきれなかったかもしれない」と振り返ったシーンは、そうした空気がセンターコートを覆い始めた矢先に起こった。
1-5と差をつけられてコートチェンジしたあと、伊藤のサーブからラリーとなり、劉詩ブンが打ち込んだボールはネットにひっかかり、小さく弾んでサイドへ流れていく。不運な失点になるかと思われたが、伊藤はフロアに落ちそうなボールに追いつくと、劉詩ブンのスマッシュにも瞬時に反応し、"みまパンチ"と呼ばれる押し出すようなフォアハンドのカウンターでノータッチエースを決めたのだ。
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