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【フィギュア】落ち込んだ鍵山優真を励まさなかったカロリーナ・コストナー「失望の時間のあとに学びの時間が来る」背景に自身の苦悩

  • 野口美恵●取材・文 text by Noguchi Yoshie

カロリーナ・コストナー インタビュー前編(全2回)

 昨季から鍵山優真(21歳/オリエンタルバイオ・中京大学)の父・正和コーチとともに鍵山の指導にあたっているカロリーナ・コストナー氏。GPファイナル銀メダル、全日本選手権優勝、世界選手権銅メダルと活躍した今季の鍵山の戦いについて、アメリカ・ボストンで開催された世界選手権後に振り返ってもらった。

ボストンで開催された世界選手権後に取材に応じたカロリーナ・コストナー氏 photo by Noguchi Yoshieボストンで開催された世界選手権後に取材に応じたカロリーナ・コストナー氏 photo by Noguchi Yoshieこの記事に関連する写真を見る

【五輪へ向けて必要な学びがあった】

ーー鍵山選手にとって、アップダウンの波がありながらも、多くのメダルを手にしたシーズンとなりました。まずは今季全体を振り返っていかがでしょう?

カロリーナ・コストナー(以下同) いろいろなことを学ぶ瞬間があるシーズンでした。彼の本来の力を考えると、力を発揮できなかった試合が何度かありました。でも、それは来季の(ミラノ・コルティナダンペッツォ)五輪に向けての必要な学びだったと思います。

ーーどんな学びになると考えていますか?

 自分が思っていたよりも結果が出るシーズンというのは、ある意味、学びはありません。たとえば、練習では心の奥にちょっと不安が残っている部分があったとしても、うまくいってしまうと、それを忘れてしまいます。そして、その課題に取り組まずに進んでいってしまう。すると、大事な試合の時に限って、その不安が(結果に)出てしまうものなんです。ですから今季、優真が抱えてきた不安が、いくつかの試合で目に見える形で出たことは、悪いことではありません。

 もちろん、不本意な演技をしてしまったら、その日のうちに何かを学ぶのは難しいものです。しかし失望の時間のあとに、学びの時間が来ます。優真は、世界選手権に向けて自分でいろいろと考えて計画をしてきました。やらされて練習してきた選手ではありません。なので、何がよかったのか、何が悪かったのか、落ち着いて分析する力があります。まずは、五輪の前シーズンに苦労できたのは、いいことだと思っています。

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著者プロフィール

  •  野口美惠

    野口美惠 (のぐち・よしえ)

    元毎日新聞記者。自身のフィギュアスケート経験を生かし、ルールや技術、選手心理に詳しい記事を執筆している。日本オリンピック委員会広報としてバンクーバーオリンピックに帯同。ソチ、平昌、北京オリンピックを取材した。主な著書に『羽生結弦 王者のメソッド』『チームブライアン』シリーズ、『伊藤みどりトリプルアクセルの先へ』など。自身はアダルトスケーターとして樋口豊氏に師事。2011年国際アダルト競技会ブロンズⅠ部門優勝。

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