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【フィギュア】落ち込んだ鍵山優真を励まさなかったカロリーナ・コストナー「失望の時間のあとに学びの時間が来る」背景に自身の苦悩 (4ページ目)

  • 野口美恵●取材・文 text by Noguchi Yoshie

【努力が結実する瞬間のために見守る】

ーー鍵山選手は、今季からひとり暮らしを始めましたが、それが彼の自立心にいい影響を与えているという感覚はありますか?

 新しい生活、新しい生き方というのは、誰にとっても大変なことです。ひとり暮らしをしたことで、優真は大人になりつつあると思います。いつまでも子どもでいられない、ある瞬間に立ち止まっていることはできないのだと痛感していると思います。一つひとつ困難に立ち向かい、転んでも立ち上がる。ひとりでいる時間が長い分、そういった人生の責任のようなものについて、考える時間は増えていると思います。

ーー今季の世界選手権銅メダルという結果を受けて、来季に向けてはどのようなアプローチを取りたいですか?

 正直なところ、このスポーツは、うまく行くこともあれば、悪くなることもある。結果を気にしてしまうと、真実が見えなくなります。昨年の世界選手権は銀メダル、今年は銅メダル。だからといって、優真が後退したわけではありません。スケーティングの質も、ジャンプの質も、練習では一貫して向上し続けています。数年前とは比べものにならないほどです。

 今季はまだ、彼の力が結果に反映されなかっただけ。戦略を大きく変更する必要はないです。今までどおりの勤勉さを続けていくことで、彼のスケートはもっと特別なものになります。練習と結果は、アプローチが違うものです。練習は、勤勉に努力すればいい。でも結果を出すには、自分の行動に責任を取れるようにならなければならない。そこは今季の優真がシーズンを通して学びました。結実する瞬間が訪れるよう、私たちは見守っていきます。

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<プロフィール>
カロリーナ・コストナー/1987年、イタリア・ボルツァーノ生まれ。2011年GPファイナル、2012年世界選手権などで優勝。冬季五輪には、2006年トリノ、2010年バンクーバー、2014年ソチ、2018年平昌の4大会連続で出場し、ソチ大会では銅メダルを獲得。2018年の世界選手権(トリノ)最後に競技から離れ、現在は振付師ローリー・ニコルのアシスタントや鍵山優真のコーチなどを務める。

著者プロフィール

  •  野口美惠

    野口美惠 (のぐち・よしえ)

    元毎日新聞記者。自身のフィギュアスケート経験を生かし、ルールや技術、選手心理に詳しい記事を執筆している。日本オリンピック委員会広報としてバンクーバーオリンピックに帯同。ソチ、平昌、北京オリンピックを取材した。主な著書に『羽生結弦 王者のメソッド』『チームブライアン』シリーズ、『伊藤みどりトリプルアクセルの先へ』など。自身はアダルトスケーターとして樋口豊氏に師事。2011年国際アダルト競技会ブロンズⅠ部門優勝。

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