検索

【フィギュア】鍵山優真の五輪へ「ふふふ。すでにいい計画がある」コーチのカロリーナ・コストナーが明かす「ユウマの過渡期」

  • 野口美恵●取材・文 text by Noguchi Yoshie

カロリーナ・コストナー インタビュー後編(全2回)

 鍵山優真(21歳/オリエンタルバイオ・中京大学)のコーチを務めているカロリーナ・コストナー氏。自身はかつて「イタリアの至宝」と呼ばれ、美しい演技で世界を魅了してきたスケーターだ。一方で、イタリアをひとりで背負う重圧に苦しんだ時期もあった。人生の深みを知るコストナー氏に、鍵山チームとの関わり、そして来季のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪への思いを語ってもらった。

鍵山優真(右)のコーチを務めるカロリーナ・コストナー氏(左)。写真は1月の冬季ワールドユニバーシティゲームズ photo by AFLO鍵山優真(右)のコーチを務めるカロリーナ・コストナー氏(左)。写真は1月の冬季ワールドユニバーシティゲームズ photo by AFLOこの記事に関連する写真を見る

【一緒にいると言葉がいらない瞬間がある】

ーー昨シーズンから鍵山チームにコーチとして加わりました。あらためて、依頼を受けた当初はどのようなお気持ちでしたか?

カロリーナ・コストナー(以下同) 私にコーチの依頼があった時はとても驚きました。一方で、振付師ローリー・ニコルのお手伝いをしていた私にとっては、長年求めてきた、優秀で指導しがいのある選手からの依頼だったので、とてもうれしい気持ちでした。

 2019年頃から、ローリーが若い選手に振り付けをする時に、橋渡しの役としてお手伝いをしていたのです。それは私が選手時代の経験を踏まえて、選手の気持ちを理解しながら、演技へのアプローチをアドバイスできるからです。選手がどんな気持ちで試合に臨むのか、どんな気持ちでそのプログラムを演じるのか、シーズン途中でプログラムをブラッシュアップする過程でも、選手と振付師の間の橋渡しがあると、よりスムーズになります。

ーー振り付けのアシスタントと、ひとりの選手にずっと帯同するコーチでは、立場が変わります。どんなことを経験されましたか?

 この仕事を引き受けることで、本当に多くのことを学べました。むしろ優真のチームと毎日一緒にいることで、言葉がいらない瞬間があることも学びました。ただ隣にいて、「この人も同じような経験をしてきたんだ」ということが伝われば、選手が頑張れるという瞬間もあるものです。

ーー普段の練習では、演技力、技術面、そしてメンタル、どんな指導の役割を担当していますか?

 私の役割は、スケーティング技術、プログラムの振り付け、演技力に関することがほとんどです。メンタル的なことは、彼自身が考え、悩み、解決しないと、それを本番で生かすことはできないからです。他人の言葉で、簡単にやる気が変わるようなものではないと思います。ただ、そのきっかけになるように、いろいろなことを話しかけています。

ーー技術的にはどんなことに取り組んできましたか?

 チームに参加させていただいて2年目。(父の)鍵山正和先生のお役に立てる、自分のフィードバックの方法がわかってきました。正和先生は、やはりジャンプの技術に優れていますし、そもそもスケーティング技術の指導も一流です。そこに私がいることで何ができるかといえば、もう少し細かい部分です。フィギュアスケートの滑りには、本当にさまざまな技術が含まれていて、すべてを自然につなげた時に、ひとつのニュアンスが生まれます。私が担当するのはその部分です。とても細かいことなので、目はたくさんあったほうがいい。正和先生と私と、4つの目で何も見落とさないように見守ります。

1 / 3

著者プロフィール

  •  野口美惠

    野口美惠 (のぐち・よしえ)

    元毎日新聞記者。自身のフィギュアスケート経験を生かし、ルールや技術、選手心理に詳しい記事を執筆している。日本オリンピック委員会広報としてバンクーバーオリンピックに帯同。ソチ、平昌、北京オリンピックを取材した。主な著書に『羽生結弦 王者のメソッド』『チームブライアン』シリーズ、『伊藤みどりトリプルアクセルの先へ』など。自身はアダルトスケーターとして樋口豊氏に師事。2011年国際アダルト競技会ブロンズⅠ部門優勝。

フォトギャラリーを見る

キーワード

このページのトップに戻る