【フィギュア】鍵山優真の五輪へ「ふふふ。すでにいい計画がある」コーチのカロリーナ・コストナーが明かす「ユウマの過渡期」 (3ページ目)
【ライバルを気にせず、自分を信じるだけでいい】
ーーコストナーさんは、2014年ソチ五輪ではそのバランスの領域に達しておられました。すばらしい演技で、銅メダルを獲得しました。
あの時の私の年齢は何歳だと思いますか? 27歳です(笑)。とてもとても長い年月でした。優真は21歳です。焦る必要はありません。
ーーあのソチ五輪の時に、コストナーさんが「無欲になれた」と話していたのが、とても印象深かったです。
欲が結果をたぐり寄せることはありません。若い頃は、ライバルのことも気になりますし、他人の意見も気になり、何を期待されているかにも敏感になります。自分自身がどうあるべきかより、他人と比較し、他人のマネをします。でも、大切なのは自分自身に目を向けることなんです。優真も、すでに自分自身に気持ちを集中させる時期になっています。自分の心だけに集中して、どんなスケーターになりたいのか、どんな人間になりたいのか、深く考えることで、ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を迎えてほしいと思います。
ーーライバルと比較してはいけないと言われながらも、イリア・マリニン選手がフリーで「7本の4回転」という異例の挑戦をしていることは、とても大きな話題になっています。一方で、昨年12月のGPファイナルでは回転不足が多く、フリーは鍵山選手のほうが首位という結果でした。ライバルであるマリニンの戦い方については、どのように考えていますか?
いつも話していますが、すべての試合がゼロからのスタートです。イリアが7本の4回転を跳ぶと宣言し、そして練習で成功させていたとしても、試合が終わるまで結果はわかりません。優真がやるべきは、イリアのことを気にすることではありません。滑っている間は、すべてのことを忘れて、ただベストを尽くせばいい。ノーミスの演技をしたいという欲望は完全に捨てて、ただ自分を信じるだけでいいのです。それが実行できた時に、自分が積み上げてきたものが、自然と体のなかから出てきます。GPファイナルのフリーで、イリアが7本の4回転を跳んでも、優真が1位になったのは、優真が無欲に滑ることができたからだと思います。
ーーイタリア・ミラノでの五輪開催となります。来季の選曲についてですが、イタリアのファンが喜ぶような選曲はあるでしょうか? たとえば、トリノ五輪で荒川静香さんは、プッチーニのオペラ『トゥーランドット』を演じて金メダルを獲得しました。
ふふふ。すでにいい計画はあります。でもまだ今は秘密です。楽しみにしていてください。
ーーありがとうございます。来季の鍵山選手が楽しみになってきました。
終わり
<プロフィール>
カロリーナ・コストナー/1987年、イタリア・ボルツァーノ生まれ。2011年GPファイナル、2012年世界選手権などで優勝。冬季五輪には、2006年トリノ、2010年バンクーバー、2014年ソチ、2018年平昌の4大会連続で出場し、ソチ大会では銅メダルを獲得。2018年の世界選手権(トリノ)最後に競技から離れ、現在は振付師ローリー・ニコルのアシスタントや鍵山優真のコーチなどを務める。
著者プロフィール
野口美惠 (のぐち・よしえ)
元毎日新聞記者。自身のフィギュアスケート経験を生かし、
ルールや技術、選手心理に詳しい記事を執筆している。 日本オリンピック委員会広報としてバンクーバーオリンピックに帯 同。ソチ、平昌、北京オリンピックを取材した。主な著書に『 羽生結弦 王者のメソッド』『チームブライアン』シリーズ、『 伊藤みどりトリプルアクセルの先へ』など。 自身はアダルトスケーターとして樋口豊氏に師事。20 11年国際アダルト競技会ブロンズⅠ部門優勝。
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