パリオリンピック女子バスケ 黄金世代のドイツに高さを突かれた日本 可能性を信じてベルギー戦ではいつもどおりのプレーを【萩原美樹子の視点】 (3ページ目)
【ベルギー戦はいつもどおりのプレーで】
サイズ不足は日本のバスケットボールにとって永遠の課題ですが、恩塚亨HCも手を打たなかったわけではありません。第1クォーターでリバウンドが劣勢なことが明らかとなり、身長184センチの赤穂ひまわり選手を3番ポジション(スモールフォワード)でプレーさせ、これでようやく日本は落ち着きを取り戻しました。
しかし赤穂選手が3番ポジションに入るフォーメーションを最近はほとんど使っておらず、リバウンドでは効果を発揮したものの、オフェンスでは選手たちが戸惑ったかもしれません。
バスケットボールという競技の特性として、選手たちはオフェンスが重たくなり、シュートが入らないと、ディフェンスでも後手に回ってしまうことがあります。この日は、オフェンスでの悪い流れが、ディフェンスにも尾を引き、ペイントエリアを攻略されてしまった感じがします。
こういう展開の試合になってしまうと、脳震盪(のうしんとう)の影響で欠場した山本麻衣選手の不在が痛かったと思わざるを得ません。苦しくなった時でも、山本選手は個人技で打開し、なんとかつないでくれるプレーをしてくれるので。
日本にとって残すのはベルギー戦となります。かなり厳しい状況に追い込まれたのはたしかですが、この試合に勝てばグループ3位になり、準々決勝進出の可能性はまだあります。
前回の東京大会では、日本が準々決勝で逆転で破った因縁の相手であり、パリオリンピック直前の7月21日にも手合わせをして、この時はベルギーが75対65で勝っています。
ベルギーは日本のことを熟知していますが、ポイントガードが欠場しており、司令塔不在という事態になっています。そこでドイツと同様、シンプルに日本の弱点であるインサイドを徹底的に攻めてくることが予想されます。日本としてはオフェンスでいいリズムを作り、ディフェンスに活気を取り戻したいところです。
山本選手の出場の可否は不明ではありますが、私が期待したいのは、馬瓜エブリン選手です。今大会、エブリン選手はアメリカ戦で2点、ドイツ戦では6点にとどまっています。
私もアンダーカテゴリーの指導者としてエブリン選手と一緒に活動しましたが、とにかく真面目な選手で、責任を自分で抱え込んでしまうところがあります。私としては、余計なことは考えず、いつも通りの働きをしてほしい。そうすれば、自然とチームも活気づくはずですから。
彼女の"シグニチャー・ムーブ"といえば、ドライブからのゴールへのアタックです。自分のリズムで、どんどん攻め込み、日本に良い流れを作ってほしい。
日本らしい快活なバスケットボールを期待したいところです。
【Profile】萩原美樹子(はぎわら・みきこ)/1970年4月17日生まれ、福島県出身。福島女子高→共同石油・ジャパンエナジー(現・ENEOS)→WNBAサクラメント・モナークス→WNBAフェニックス・マーキュリー→ジャパンエナジー。現役時代は、アウトサイドのシュート力に定評のあるフォワードとして活躍。日本代表でも多くの国際大会に出場し、1996年アトランタ五輪では1試合平均17.8得点、3Pシュート成功率44.2%をマーク。準々決勝のアメリカ戦でも22得点をマークするなどその活躍が目に留まり、翌年、ドラフでWNBA入りし、2年間プレーした。現役引退後、早稲田大学を卒業。指導者として同大女子バスケボール部、2004年アテネ五輪女子代表のアシスタントコーチを務めるなど経験を積み、現在はWリーグ・東京羽田ヴィッキーズで指揮をとる。
著者プロフィール
生島 淳 (いくしま・じゅん)
スポーツジャーナリスト。1967年宮城県気仙沼市生まれ。早稲田大学卒業後、博報堂に入社。勤務しながら執筆を始め、1999年に独立。ラグビーW杯、五輪ともに7度の取材経験を誇る一方、歌舞伎、講談では神田伯山など、伝統芸能の原稿も手掛ける。最新刊に「箱根駅伝に魅せられて」(角川新書)。その他に「箱根駅伝ナイン・ストーリーズ」(文春文庫)、「エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは信じること」(文藝春秋)など。Xアカウント @meganedo
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