河村勇輝がW杯で学んだ「海外に行くうえで必要」なこと 日本バスケは世界基準に (4ページ目)
【パリ五輪に向けて代表選考もヒートアップ】
「ヒットファースト」は河村だけでなく、ほかの日本代表メンバーたちも意識している点だろう。
たとえば、ホーバスHCに見出されて「無名の存在」から日本代表となった吉井裕鷹もしかり。外国籍選手らのバックアップとして出場時間は昨季より平均5分以上減っているものの、コートでは自身より体躯の大きな外国籍選手とマッチアップする時、相手に体をぶつけるフィジカルに磨きをかけているように見受けられる。
近年のBリーグチームの多くはアウトサイドでもプレーできる万能型の外国籍選手と契約し、それに伴ってよりドライブインと3Pを用いた「世界のスタンダードに近いスタイル」を採用し始めている。河村の所属する横浜BCも、ビッグマンながら3Pに長けたジェロード・ユトフを獲得し、オフェンスでは選手間のスペースを取ってドライブと3Pを強調する、日本代表のような戦いを展開している。
ワールドカップで日本代表のアシスタントコーチも担った宇都宮の佐々宜央HCは、ディフェンスというチームのアイデンティティは変わらず柱に据える一方、日本代表の「いい部分は使っていかなきゃいけない。Bリーグすぎるバスケットになりすぎないように」と語っている。
Bリーグチームのスタイルの変化は、3Pの試投数にも表れている。昨季B1で3Pを1試合平均30本以上放ったチームは千葉J(32.1)だけだったが、今季はここまで6チームと増加している。
日本代表がワールドカップで活躍したことにより、バスケットボールに対する世間の注目度は明らかに高くなった。その影響はBリーグのチームにも派生し、より「世界基準のゲーム」を展開しつつある。
また、パリ五輪を来夏に控えることで、選手たちも代表選考を意識しながらプレーするようになるだろう。日本で開催されたワールドカップを経て、見る側の目もより厳しいものとなってきている。
Bリーグが始まって8シーズン目。日本代表とBリーグの戦いぶりが、これまで以上に連動して考えられるようになってきた。
著者プロフィール
永塚和志 (ながつか・かずし)
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。
Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、 2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。 他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験 もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社) があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・ 篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社) 等の取材構成にも関わっている。
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