富樫勇樹と河村勇輝 バスケ日本代表2人のPGの「違い」をレジェンド佐古賢一が語る (3ページ目)

  • 牧野豊●取材・文 text by Makino Yutaka
  • photo by YUTAKA/アフロスポーツ、加藤誠夫/アフロ

――目に見えるパフォーマンスでの違いは?

「端的に説明すると、河村選手のプレーは直線的、富樫選手のプレーは曲線的という印象です。視野の広さ、アシストのセンスは共通していますが、富樫選手は柔らかさがあり、緩急の中でチャンスを見出すスタイルで、河村選手は強引にチャンスを作り出そうとするスタイル。ターンオーバーは河村選手の方が多い印象があるのは、そうしたプレーの質によるものだと思います」

――今後の二人に期待することをお願いします。

「まず河村選手は、世の中のバスケットファンや今回W杯を見て興味を持ってくれた人間が自分に何を求めているかということを、自分自身がよく理解していると思います。そのこと以上に河村選手を育てていくために必要なものを的確にアドバイスできる人間って、この世の中にいないと思います。彼は彼のバスケットを構築していくべきだし、そのまま子どもたちのいい手本になってもらいたい。自分のやるべきこと、求められること、できること、できないことが整理されている印象です。いろんな事を迷いながらも、今自分が感じているものを率直に表現していく。その積極性を忘れたら彼らしくないと思うし、やっぱり自分のスタイルでチームを引っ張ってほしいと思います」

――富樫選手についてはいかがですか。

「僕は、変化の年になるのかなと思っています。絶対にチャレンジしてもらいたいのは、河村選手に負けないということ。勝てるバスケットを追求するなら、絶対に勝たなきゃ駄目なんです。チームの勝利はもちろんですが、1対1でもそう(直接対決は2024210日・11日)。プライドを持って、やってもらいたい。バスケットボールの深みにはまっていくんだったら、もうどんどん深みにはまってほしい。今の富樫選手には試合を通じて30点を取ることではなく、それ以上のことが求められている。だから難しい挑戦になるとは思います。何を言っているんだ、と思われるかもしれませんが(笑)、コートに立っている時はいつでも、その中心で存在感を発揮してもらえることを期待したいです」

PROFILE
佐古賢一(さこ・けんいち)
1970717日生まれ。シーホース三河シニアプロデューサー。北陸高校(福井)インハイ優勝→中央大(3年時に日本代表に選出。「ミスター・バスケットボール」の異名を取った日本バスケ界屈指のポイントガード。1993年〜2002年いすゞ自動車、20022011年アイシンシーホースでプレーし、通算で全日本総合11回、JBL10回の優勝を経験。日本代表として活躍し、1995年福岡ユニバーシアード準優勝、1998年世界選手権出場(31年ぶり自力出場)。シーホース時代は2005年に左足アキレス腱断裂も06年に復帰。同年の世界選手権の日本代表は辞退もドーハアジア大会代表に入る。20113月に引退を表明。引退後は日本代表のアシスタントコーチ、2021U19W杯日本代表ヘッドコーチ。トップリーグでは、広島、北海道などで指揮を執った。今年7月からシーホース三河シニアプロデューサーに就任。

著者プロフィール

  • 牧野 豊

    牧野 豊 (まきの・ゆたか)

    1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「Jr.バスケットボール・マガジン」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。229月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

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