井上雄彦×渡邊雄太スペシャル対談01「やっと自分がNBA選手になれた気がしました」 (2ページ目)

  • 伊藤 亮●取材・文 text by Ito Ryo
  • 細野晋司●撮影 photo by Hosono Shinji

渡邊 1、2点を争う時間帯、本当に終盤3分を切ったような大事な時間帯で試合に出られるようになったのは、今までのシーズンにはなかったことでした。実際に僕のシュートで勝った試合もありましたし。そういう意味で戦力としてチームにも、チームメイトにも認められたと言いますか。やっと自分がNBA選手になれた気がしました。

井上 ケビン・デュラント(KD)といったスーパースターからの信頼を勝ち取っているのは、見ていてもわかって、それもすごいことだと。本当にどこまでも行ってくれ、という感じで見ていましたよ。

 一方で、その後にKDやカイリー(・アービング)がチームを去り、完全に違うチームになってしまった。そしてベンチにいる時間が長くなった。あの時期はメンタルをどう保っていたの?

渡邊 (トロント・)ラプターズ所属時も、状況は違えども似たようなことがありまして。特に2021-22シーズンは少しずつ試合に絡めるようになってきて、でも新型コロナウイルスに感染してしまって、その後パフォーマンスが落ちてしまいました。それでベンチを温める時間が増えてしまった。

 ですが、その時と比べると、今回は意外と冷静でした。自分としてはやれている感覚があって、チームの方針上、仕方のないことだと完全に割りきれていました。

井上 自分がダメなわけではないと。

渡邊 はい。コートに出してもらえれば活躍できる自信も正直ありました。ラプターズの時は試合に出られずきつかったんです。自信もなくなりましたし。それもあってシーズン前はNBAでなくても(Gリーグでも)いいのではないか、と考えたこともありました。

 でもネッツでのシーズンは、状況を冷静に第三者目線で分析できました。(試合に出られない間)モチベーションが下がらなかった、と言ったら嘘になりますが、極端に下がることはなかったです。

井上 だから「NBA選手になれた」と。

渡邊 それまではベンチから試合を見ていても「今、ここで自分がコートへ出されても、何ができるんだろう」と不安になっていた時もありました。でもネッツでは、ベンチにいる間も「いつでもいけるぞ」という感覚でいられたので。NBA選手として自信がついてきたというのはあると思います。

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