今季F1は「近年稀に見る壮大なショー」 中野信治が熱弁するランド・ノリスの特殊能力
大接戦になりつつあるF1のレッドブル対マクラーレンのチャンピオン争い。ドライバーズ選手権では4連覇を目指すマックス・フェルタッペンとランド・ノリスのポイント差は78点とまだ大きいが、コンストラクターズ選手権ではレッドブルのリードは42点差まで縮まっている。
後半戦でタイトル争いのキーマンになりそうなのはノリスと、フェルスタッペンの僚友セルジオ・ペレスだ。王者フェルスタッペンの対抗馬に成長したノリスのすごさとは? ペレスの不振脱却のカギは? 元F1ドライバーで解説者の中野信治氏にキーマンについて語ってもらった。
ドライバーズランキングで2位につけているランド・ノリス 撮影/桜井淳雄
【"目がいい"ドライバーによるタイトル争い】
中野信治 今シーズン、ドライバーズ選手権で4連覇を目指すマックス・フェルスタッペンのライバルとして成長してきたランド・ノリス。以前から言い続けていますが、ノリスはドライバーとしてマシンを走らせるセンスがズバ抜けています。
ドライビングのデータを見ていて、スピード感覚という部分ではフェルスタッペンに匹敵しています。高速コーナーでのスロットルの開け方やラインのトレースの仕方、ステアリングの切り方などを見ていて、フェルスタッペンに唯一対抗できると感じたのはノリスだと思っていました。
圧倒的なスピード感覚は、目がいいと言い換えることができます。マシンの限界ギリギリのところで走れるのがF1ドライバーですが、フェルスタッペンやノリスはマシンの限界を超えたところでもマシンをコントロールできる。それは目がいい、つまり圧倒的なスピード感覚がないとできないんです。これは生まれ持ったセンスというか、特殊能力に近いかもしれません。
フェルスタッペンやノリスのような感覚を持つ選手としては、ルイス・ハミルトンもそのひとりだと思いますが、F1ドライバーのなかでもひと握りしかいません。今シーズンは、全ドライバーのなかでも飛び抜けたスピード感覚を持つふたりがチャンピオンを競い合っています。
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著者プロフィール
川原田 剛 (かわらだ・つよし)
1991年からF1専門誌で編集者として働き始め、その後フリーランスのライターとして独立。一般誌やスポーツ専門誌にモータースポーツの記事を執筆。現在は『週刊プレイボーイ』で連載「堂本光一 コンマ1秒の恍惚」を担当。スポーツ総合雑誌『webスポルティーバ』をはじめ、さまざまな媒体でスポーツやエンターテイメントの世界で活躍する人物のインタビュー記事を手がけている。